第３章─７話 高さへの恐怖 ページ40
その後しばらくして特訓は終わった。イナズマ落としは無事完成に近付いているようだ。
「よーし、あとひと踏ん張りだ！野生中との試合はもうすぐだぞ！」
地区予選の初戦、希望が見え始めている皆の表情は、疲れきったはずなのに明るい。Aには、そんな皆が眩しく映った。
間近に迫った地区予選…必殺技の完成へ向け、皆は日々特訓に励んでいた。
「2人共、もう高さは十分じゃない？」
「ああ、後は二人で合わせてみよう！」
そしていよいよ、二人でタイミングを合わせる練習を行うが…中々上手くいかないようだ。
「どうした？途中まで上手くいってたんだけどな…」
そう聞いた円堂への壁山の回答は、酷く意外なものだった。
「た、高いとこ怖いっす…」
今更だが、どうやら壁山は高所恐怖症らしい。周りにいた皆は呆れたと言わんばかりの表情だ。
「そんなことは先に言いなよ…」
「下を見ちゃうから怖くなるんじゃない？ずっと豪炎寺くんを見ていたらどう？」
「やってみるっす…」
木野のアドバイスでもう一度挑戦してみる。が、やはり壁山は地面からの高さを気にしてしまうようだ。
「壁山…」
「すみませんキャプテン、つい下が気になって…」
皆が不安を覚え始めたその時。
「あら、こんな状態で次の試合…大丈夫なのかしら？」
木陰から姿を表したのは夏未だ。最近、練習の時間によく姿を見せるようになった彼女だが、その度にこうして突っかかってくる。
「誰に何を言われたって、豪炎寺と壁山はイナズマ落としを完成させる！俺はそう信じてる！」
「…そう、試合が楽しみね」
円堂の力強い言葉に表情を変えず、夏未はそれだけ言い残し去っていった。相変わらずだなとAは呆れを通り越して関心を覚えた。
「キャプテン、信じてくれるのはありがたいっすけど…」
「大丈夫、高さを克服できるように特訓してやるから！」
「は、はい…」
その後、高さを克服するため様々な特訓を行ってみたが、その結果はどれもイマイチのようだ。
その様子を見ていたAが何かを考え込みながら呟く。
「さて、どうしたものか…」
その日練習が終わり一同が解散した後、豪炎寺は更なる特訓のため再び鉄塔を訪れると、そこには意外な先客がいた。
「…うわっ！？」
その先客が、空中で体勢を崩し地面に強く背中を打ってしまう。
「いったぁ…」
「おい、大丈夫か！？」
頭上から声をかけられ、先客の少女は頭を上げる。豪炎寺と目が合った少女は驚き目を見開いた。
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作者名：紫苑 | 作成日時：2023年2月19日 1時
