第３章─１話 土門飛鳥 ページ34
《第３章─開幕》
尾刈斗中に勝利を収めた次の日。
「フットボールフロンティアが始まるぞー！」
部室で円堂がそう叫んだ。いよいよフットボールフロンティアの地区予選が幕を開ける。
「それで、1回戦の相手は？」
Aが聞いたのと同じタイミングで、顧問の冬海が部室に入ってくる。
「野生中ですよ」
彼女には聞き覚えのある名前だった。
「野生中って確か…」
「去年の地区予選で、帝国と戦ってますね」
音無がそう言った。
「初戦から強豪ね…」
「初戦大差で敗退…なんてことはやめて下さいね？ああ、それから…」
冬海がそう告げると、部室にひょこっと1人の少年が顔を覗かせた。
「ちーっす！俺、土門飛鳥！一応ディフェンス希望ね！」
「！？」
顔を覗かせた土門という少年に、Aが大きく目を見開く。彼の登場に驚いたのは彼女だけではなかった。
「土門くん！」
「あれ、秋じゃない！」
どうやら木野と土門には何らかの関係があるようだ。円堂が木野に問いかける。
「なんだ、知り合い？」
「うん、昔ね」
円堂は土門へ手を差し伸べた。
「歓迎するぜ！フットボールフロンティアへ向けて一緒に頑張ろう！」
「相手、野生中だろ？大丈夫かなぁ…」
「何だよ、新入りのくせに」
染岡がぶっきらぼうにそう言った。
「前の中学で戦ったことあるからね…瞬発力、機動力とも大会屈指で、特に高さ勝負にはめっぽう強いのが特徴だ」
その後雷門サッカー部はフットボールフロンティア初戦へ向けて練習を始める。Aは練習へ向かう皆の隙を伺い土門と2人、部室に残った。
「説明してくれる？何であなたがここにいるのか」
「そりゃもちろん総帥…あなたのお父さんからの命令だ」
土門のその言葉に、Aは不機嫌そうな表情を浮かべる。
「そんなこと分かってる。目的は何？」
「目的、ね…簡単に言うと、雷門中サッカー部を潰すため。まあおおよそ“女帝様”と同じだよ」
土門の煽るような言葉遣いに、Aはますます不機嫌になる。
「…その呼び方やめて」
「まあまあ、そうカッカしないでよ。俺はこれからあなたのことを何て呼べばいい？…影山さん？」
「…普通にAでいいわ」
ヘラヘラした様子がよりAの癪に障る。
「…私とあんたの目的は一緒じゃない」
「ああ、まあ、そうだろうね。ミイラ取りがミイラになるとは、よく言ったもんだ」
「…何が言いたいの」
「呑気な雷門の連中に絆されたんだろ？この前の練習試合、相当暴れたって聞いたぜ」
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作者名：紫苑 | 作成日時：2023年2月19日 1時
