第２章─14話 尾刈斗との対戦 ページ30
そしていよいよ迎えた試合当日。グラウンドには、帝国戦と同じく試合を観戦しにきた生徒で溢れていた。
辺りを見回していたAは校門に、帝国の鬼道と佐久間がいることに気付いた。試合を見に来たのだろうか、その視線は雷門サッカー部へと注がれている。
Aは彼らへの警戒を心に留めながらグラウンドへ視線を移す。そこでは円堂と夏未が何かを話しているようだった。
「あ、来ましたね！」
そう叫んだ音無の視線の先には、異様な雰囲気を纏った尾刈斗中の選手達がいる。帝国とはまた違った不気味さだ。
そしていよいよ、その時が訪れる。尾刈斗中のキックオフで試合が開始された。ボールをキープしたまま、尾刈斗中のストライカーが次々と雷門の選手を抜いて行く。そして円堂が守るゴールへと迫り、必殺シュートを放った。
「くらえ、ファントムシュート！」
「ゴッドハンド！」
「…何っ！？」
円堂は必殺技で見事に相手のシュートを止めた。染岡に次ぎ円堂も必殺技を習得していた。
「物にしたんだな、円堂」
「まあな！皆落ち着いて行こうぜ！」
風丸の言葉に円堂は笑顔でそう答える。試合の流れは雷門に向いているように思えた。
尾刈斗中のシュートを止め、雷門はここから反撃に走る。
「豪炎寺さん！」
少林寺が豪炎寺にパスしたが、彼は相手ディフェンダーに取り囲まれてしまった。
「こっちだ！」
すると染岡がパスを促す。
「見せてやる！俺の必殺シュート！ドラゴンクラッシュ！」
豪炎寺からパスを受け、染岡は必殺シュートを放った。強力なそのシュートを、相手キーパーは止めることができず──
「ゴーール！」
実況の叫びがグラウンドに響き渡り、辺りは歓声に包まれた。肩を組み喜び合う染岡達。
「…何ら問題なさそうね」
Aは誰にも聞こえない小さな声で呟く。
尾刈斗中からのキックオフで試合が再開される。再開後すぐにボールを奪うが、相変わらず豪炎寺はガッチリマークされていた。
「尾刈斗中は全く焦ってませんね…」
音無が呟く。ボールは再び染岡へパスされた。
「ドラゴンクラッシュ！」
彼が放ったシュートは次々と決まっていく。雷門サッカー部一同はすでに勝利を確信しているようだが、マネージャー一同は違和感を拭えなかった。
するとその時、尾刈斗中の監督が何かを呟きながら立ち上がった。
「まさか、豪炎寺くん以外にあんなストライカーがいたとは…」
「…？」
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作者名：紫苑 | 作成日時：2023年2月19日 1時
