第２章─６話 焦る気持ち ページ22
「お！その勢いだ染岡！そんなに豪炎寺言ってたら、そりゃ染岡も怒るって」
そんな染岡を半田が激励する。
「ま、元からいるメンバーで頑張るのもアリかもね」
「でもあの時豪炎寺さんが来てくれなかったら、帝国には勝てませんでしたよ…？」
松野と宍戸がそう言った。
「帝国は他の学校と格が違うし、どの道勝てたのは奇跡のようなものよ。いつまでも他人を頼ってたら強くなれないわ」
「…Aさんは強いからそんなことが言えるんですよ」
宍戸のその言葉に、Aは返す言葉が見つからなかった。
「そういえば…」
気まずい空気になり、すかさず円堂が口を開いた。
「帝国との練習試合で必殺シュートを打たれそうになった時の、あの強い光…あれは一体何だったんだ？」
「ああ、それは私の必殺技」
「え、お前必殺技が使えるのか！？」
「だから言ったでしょ、私はあなたが思ってるより何倍も強いって」
円堂の言葉に、Aはそう答える。
「凄い…僕も必殺技使ってみたい！」
「目金はまず基礎から身につけなきゃね」
「う…」
Aと目金のやり取りに、その場に笑顔が溢れた。空気が明るさを取り戻したようだ。
「さ、皆！練習に戻るぞ！」
そして円堂の一言で練習が再開された。
辺りが夕焼けに染まる頃、練習を終えた皆はそれぞれ帰路に着こうとしていた。そんな中、Aは帰ろうとしていた染岡を呼び止めた。
「染岡、ちょっといい？」
「…何だ」
少し面倒くさそうな表情を浮かべ、染岡は振り返る。
「あなた、何をそんなに焦ってるの？」
「…あ？」
「今日のあなたのプレーからは、酷い焦りが見て取れたわ。あなたが何に対してそんなに焦っているのか、私には分からないなと思って」
「………」
Aの言葉に、染岡は図星だったのか黙り込んでしまった。その表情は、どこか哀愁を含んでいた。
「…豪炎寺はサッカーをやめた。ここに彼はいない。だから、何も焦る必要なんてない」
「…んなこと、分かってるさ」
「私もフォワードだし、同じような経験はある。あなたの気持ちもよく分かるよ」
「だが、お前は十分強いじゃねぇか」
いつになく真っ直ぐ感情をぶつけてくる染岡に、Aは彼が変わるための分岐点に立っていることを理解していた。
「…どうして、私や豪炎寺が強いか分かる？」
「…あ？」
「私たちはね、それだけ努力したのよ。強くなるため、必殺技を使えるようになるために」
「………」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 52人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑 | 作成日時：2023年2月19日 1時
