第１章─10話 怒りの閃光 ページ11
「それとも？私一人加わったくらいで、この点差から巻き返されるとでも？あの帝国ともあろう方々が、そんな弱気なこと考えてるの？」
「何だと…！？」
Aの煽るような言い方に、寺門は突っかかろうとする。
「やめろ」
「鬼道さん…しかし…」
「いいだろう。アイツの言う通り、これは正式な試合ではない…交代を認める」
「…フン、そりゃどうも」
そう言うと、Aは染岡に向き直る。
「代わるならそこの目金に代わってもらえ──って、あ？目金はどこだ？」
「え？」
染岡の言葉に、Aが振り返る。するとその視線の少し先に、目金が抜き足差し足でフィールドから逃げ出しているのが見えた。
「おい！どこ行くつもりだ！」
染岡の怒号に、目金はビクリと体を震わせる。
「も、もう嫌だ！こんなの嫌だー！」
目金はそう叫ぶと、その場にユニフォームを脱ぎ捨てどこかへ走り去ってしまった。
「何とここで目金が試合放棄！雷門は再び10人になってしまった！」
実況の声が、目金が逃げ出したことを告げる。
「クソ、あの野郎…！」
「…無様だな」
その様子を見かねた鬼道が、染岡の言葉を遮りそう吐き捨てる。
「無理だ」
「お前らには、俺達から一点取ることすらな！」
鬼道に続き辺見と寺門がそう言うと、3人はゲラゲラと笑い出す。その様子に腹を立てたのか、Aは怒りの混じった低い声色で俯いたまま呟いた。
「今なんて言った？」
「…あ？」
「一点取ることすら無理、か…なら、ここで証明して見せるよ」
Aは顔を上げ、決意を固めた表情で言い放つ。
「最後まで諦めずに戦えば、勝てる可能性は失われないってことを」
「…何だと？」
Aの言葉に寺門は眉を顰めながらそう言った。
「まだ試合は終わってない。あんた達の勝利はまだ確定していないわ」
「…アイツに構うな。続けろ」
鬼道は帝国の皆に、変わらず円堂を狙い続けろと指示を出す。
「チッ…百烈ショット！」
「…もうこれ以上、あんたらの好きにはさせない！」
寺門の掛け声と共にAがそう叫んだ、次の瞬間。フィールドは眩い光に包まれた。
「うわっ！？」
グラウンドにいた全員がその目を覆う。唯一、その光の“根源”であるAを除いては。
「なっ…どういうことだ！？」
誰かの声が聞こえる。寺門によって勢いよく雷門ゴールへと放たれたはずのボールは、光がフィールドを包んだ次の瞬間にはAの足元に転がっていた。
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作者名：紫苑 | 作成日時：2023年2月19日 1時
