アブノーマルと【黒】 (ページ6)

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お水ページ6

『……大丈夫ですか？あの、よかったらお水どうぞ』

控えめに言ってくれたんやけど、俺はエンリョなしにペットボトルを受け取って、一気に半分くらいまで飲んだ。

横にいるこの女は、マスクをして帽子を深くかぶってたんやけど、顔はとても小さく、足もスラッと長かった。

そのことに気がついてから、俺は急にへんに冷静になって、初めてそこでスキャンダルとかのことを気にし始めた。

黒「あ、あの…助けてくれてホンマありがとうございます。ホンマ、あなたがおらんかったら、その、おれ、死んどったわ…」

『いいえ。こちらこそ』

黒「そんで、助けてもらっといてホンマあれなんやけど、俺…」

『わかってます。今は何も言わない方が良いですよ。大丈夫です。この事に関して、私は絶対に何も口外したりしませんから』

女がきっぱりと言ってくれて、安心した。

黒「なあ、俺、今夜眠れるんかな」

『きっと……眠れないと思います』

黒「うん。俺もそう思うわ…誰か呼ぼうかな」

『…それは、やめた方が良いと思います。ホテルに泊まった方が良いと思いますよ。一番人通りが多くて光が入る部屋がきっと今日は安心できるので…』

女はホテルを検索しようとした。

黒「あの、あなたはどうするんですか？」

『帰りますよ。あ…この新宿の…』

何かほっとしたけど、今度は言い知れない恐怖みたいなのがズーンとのしかかってきて、俺は女の手をぎゅっと握って、運転手に急ぐように言った。

女は何か言いたげだったけど、俺は無視していた。

キッ……

「一万二千円です」

黒「あ、釣りはいらんわ。とっといて」

二万円出し、女の手を握って、一緒にタクシーを降りる。察した運転手はすぐに出た。

俺は、まだ戸惑ったままの女の手を引いて、エントランスをくぐった。