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赤「ぼくのために 電話は鳴らないでおくれ」
『あぁ、それ…』
赤「いまピッタリやな」
『ねむいって言うか、休みたいですね』
赤「まあ休んだところで何にも変わらへんけどな」
『はい』
そうなんだよ。
私は眠りたいんだ。誰にも邪魔されないで。
私は朝が来るのが嫌なんだ。1人でぼんやりとした不安と戦ってむかえる朝なんて。
『ねむ、りたい……』
赤「ん…」
ぽそりと口から出た言葉に気づかなかった。
ばさりと掛けられたのはブランケットだった。
赤「ほら、くるまっとき」
『えっ、あ、ありがとうございます』
不意のことで逆ハッとした頭で、久しぶりに外を見てみると、雨はやんで薄い霧になっていた。
赤「おれも眠い」
またぼんやりし始めた頭で聞いたのはそれだった。
ひゅう、とどこかの広い駐車場に入ったらしい車は、ゆっくりと停車し、私たちは後部座席へいどうする。
赤「……おれも眠りたい。ゆっくり」
『そうですね』
赤「でも、寝足りない、気がすんねん」
『……1人で眠るのは、こわいですか?』
赤「……怖くはない。でも…嫌やなぁ」
何となく渋谷さんの思ってることが判ってしまったから、私は手を握った。
私たちを包むブランケットは暖かい。
ラジオからは「スローバラード」
こんな夜も、たまにはね。
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作者名:柴色 | 作成日時:2017年10月4日 23時