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「いい?A、バスケは身長が全てじゃないから」
「身長が低くたって強い選手は強いし」
「これから伸びるから気にしない!!」
慰めの言葉は時に無自覚に放出された言葉と同等の威力で胸を刺す
思ってたより小さいなんて言われたAを励ますように女バスの3年生達が必死に言葉をかけてくるのだが
正直三井の言葉よりも
身長が160以上ある女子の中でも背が高い方に分類される先輩たちの言葉の方がグサグサと刺さっている
「大丈夫です、そこまで気にしてないので」
「何を言い出すかと思えばあんなこととは」
「でもさ……やっぱAは本当に憧れだけなの?」
「え?」
"憧れだけなの?"
この言葉が今日1番胸に深く刺さって抜けなかった
自分が信じてきた気持ちはちょっとやそっとの事では揺らがない、そう思っていたのに
今日はなんだかあっちに行ったりこっちに行ったりとどこか気持ちが忙しない
憧れの存在が見間違えるほど髪を長く伸ばして、いかにも何かありましたと言いたげな姿に変わり果てて
更には幼なじみやその仲間をぶん殴っていても
憧れの気持ちはこれっぽっちも揺れることがなかったのに
自分でもわかるくらいあの時自分の中にあった憧れという名の"特別"が消えかけの蝋燭のように揺れた気がした
「顔、真っ赤だよ」
普段は熱くも冷たくもない普通の温度の先輩の手が
今日は少しひんやりしている気がする
いや、それとも自分の顔が熱いのだろうか
「本当はもう少し話してみたかったんじゃない?」
もうわかんない
好きも、憧れも、何もかもがわからない
あの人を前にするとそれまで心の中にあったものが
突然形を変えて、熱に溶けて、どこかへ行ってしまう
言葉だって頭の中にあったものが突然白紙になってしまうんだから本当に困ったもんだ
「わかんないです」
「でも……なんか今は」
どうしてあの時、目が見れなかったんだろう
どうしてあの時、手が触れて心臓が跳ねたんだろう
普通だったものが全て普通じゃないような
あの感覚をどうやって言葉にしようか
「嬉しいのと恥ずかしいのが…一緒になってなんか変です」
「あんなに見れたものが見れなかった」
まるで不明瞭な夢の中にいるよう
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ピトリコ(プロフ) - 高校生ならではの会話が凄くリアルで惹き込まれました!これから最新話まで一気に読破します!素敵な作品に出会えてよかったです。 (2023年3月31日 20時) (レス) id: 36bff0e057 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - こちめるさん» 無理せず頑張って下さい!更新楽しみにしてます^^ (2023年2月10日 22時) (レス) @page50 id: 27c27c579a (このIDを非表示/違反報告)
こちめる(プロフ) - みみさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとっても嬉しいです🥲 (2023年2月10日 0時) (レス) id: b38c8404b7 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - いつも楽しみにしてます^_^ (2023年2月9日 10時) (レス) @page50 id: 27c27c579a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こちめる | 作成日時:2023年1月29日 20時