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あんなに細い腕に
ボールをゴールに届けるほどの力があるとは思えない
しかしAはあっさりと見ている人の想像を超えていくかのように
他の部員のシュートフォームが霞むほど美しいシュートフォームで
余計な力や無駄な動作のないまさにお手本のようなシュートを決めた
「ナイシュー!!」
誰もいない体育館で誰よりも早くこの場所に来て
1人で黙々と練習していただけのことはある
何より驚いたのはボールを持った瞬間の顔つき
朝見たAと今目の前にいるAが同じ人とは思えない
「……………今の流川に似てんな」
「ル、ルカワ!?ブッチーのどこがルカワなんだよ!!」
「あーでもわかるな、あの一瞬だけ見える顔はどことなく流川っぽい」
「ブッチーはあんなにキツネっぽくないぞリョーちん!ブッチーに失礼だ!」
たとえ1年生でも
3対3でオフェンスとディフェンスに別れていても
チームメイトが点を決めたら自分の事のように喜び
褒めたたえ合ういい雰囲気のある女子バスケ部
しかし点を決めた当の本人は…
「こらアンタたちちょっと静かにしなさい!今日は男子バスケ部だけじゃないんだから!」
「はーい!ごめんねアヤちゃん」
「本当に反省してるの?」
先輩に囲まれながらもただ1人
目線を下に落としたまま黙り込んでいた
もちろん声をかけられたら笑顔で応じているが逆に言えば声をかけられるまで何かを気にしているようにも見える
「三井サン、そろそろ次の練習始まりますよ」
「おう 今行く」
誰がどう見ても1番輝いている
しかしそんな時ほど
どうしようもない所へ落ちてしまうことも
「しかしミッチーの好みがブッチーみたいな子だったとはな」
「お前まだそれ言うか」
「いや三井サン案外チョロいから本当に好きになっちゃったり…」
「あるわけねぇよ!!」
この時はただ
憧れの男子バスケ部の先輩と
見かけによらず結構やる女子バスケ部の後輩
その程度の関係だった…はずなのに
人生はいつだって何が起こるかわからないものだと後になって気づかされる
絶対だと信じてたものが本当に絶対とは限らないし
順調に歩んでいた終わりの見えない道だっていつ崩れるかわからないはずなのに
この時はただ、馬鹿みたいに信じきっていた
「ぶっちゃけ名前くらいは気になりません?」
「…………いや」
「嘘つけ」
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ピトリコ(プロフ) - 高校生ならではの会話が凄くリアルで惹き込まれました!これから最新話まで一気に読破します!素敵な作品に出会えてよかったです。 (2023年3月31日 20時) (レス) id: 36bff0e057 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - こちめるさん» 無理せず頑張って下さい!更新楽しみにしてます^^ (2023年2月10日 22時) (レス) @page50 id: 27c27c579a (このIDを非表示/違反報告)
こちめる(プロフ) - みみさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとっても嬉しいです🥲 (2023年2月10日 0時) (レス) id: b38c8404b7 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - いつも楽しみにしてます^_^ (2023年2月9日 10時) (レス) @page50 id: 27c27c579a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こちめる | 作成日時:2023年1月29日 20時