夏 に 解 け て

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適当に電車内を見ていてどこからどう見ても怪しいヤツが挙動不審な動きをしていたのが気になり

何してんだコイツ…と少し引き気味になっていたところ

目線がAの方を向いていたため

挙動不審な動きをしていた原因がAだとわかったらしい

何をしようとしてたのか、その人がどんな表情をしていたのかなど細かいことは一切言わず

気を使ったのか内容をふんわりさせて教えてくれた










｢正直あのままじゃ何されてたか分かんねぇぜ｣

｢こう言っちゃなんだが転びかけたおかげだな｣









全然気づかなかった、気づく余裕がなかった

たまたま見てくれていた人がいたからよかったけど

もしそうじゃなかったらあそこで無様に転ぶどころか

例の挙動不審すぎる人に何かをされていたかもしれない












｢じゃあなお前ら また明日な！｣

｢じゃあねみっちゃん！明日も練習頑張ろうね！｣

｢おう！｣










しばらくして一緒に乗っていた同級生は

最寄り駅に到着したため電車を降りた

さっきまでそこそこ賑やかだった車内が嘘のように静まり返っている













｢(高校でもバスケやってるんだ…)｣

｢(そりゃそうか、あんなに上手なんだからあれきりで辞めるような人じゃないし周りが放っておかないよね)｣








神奈川県の中学男子バスケット選手の頂点に立った男が

今、目の前にいる

バスケをやってない人からすればイマイチすごさが伝わらないかもしれないが

地方と比べて都会の方は比較的どのスポーツも余程マイナーなものじゃなければ競技人口が多い

そんな中で頂点に立ったのだから大したものだ

既に中学3年生の時点であれだけの強さと活躍、そしてこれから更に成長するであろう伸び代を持っていた選手だ

きっと選手としての道はまだまだこれからで

もしかしたらその存在が全国に轟くかもしれない

この時は密かにそう信じて疑わなかった

まさかこの日から数日後にああなるとは誰も思いもしないだろう











｢最初見た時よりかなり顔色が良くなってきたな｣

｢はい、おかげさまで…｣

｢………ちょっとそこ座って待ってろよ｣










いつもなら秒で着いちゃうようなそんな距離感にあるはずの家から近い最寄り駅にやっとの思いで辿り着いた

結局なんだかんだ言いつつも彼はずっとAのことを気にかけてくれ、一緒に駅に降りたのだが

今度はカバンの中から財布を出し颯爽と走り出してしまった

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