第１７話 ページ17
翌日
私と三好は、わざわざ午前中の別々の時間に外に出て、違うルートで待ち合わせ場所に行った。
「お待たせしたかしら」
「いえ、今来たところです。それじゃあ行きましょうか」
目深に被ったハットの陰の眼が、優しげに細められた。
三好は私をエスコートし、常に隣に張り付くようにして歩く。
…当然ながら紳士的な振る舞いは完璧だ。
「劇まではまだ時間があります。何処か、見たい場所などあれば案内しますよ」
「見たい場所…人の疎らな公園が見たいです」
「お連れします、と言っても、この時間なら何処も変わりませんが」
ふっと笑って、静かに見下ろしていた目を前に向ける。
間近で見ると、案外、綺麗な瞳だった。
公園は三好の言ったように、表通りと変わらない程か、それより人が少ない程だった。
居るのはベンチで休む老人くらいだ。
「ここは彼処からも近いですし、何も無いから子供は来ませんよ」
「ええ、ありがとう」
老人が座るベンチの、一つ隣のベンチに、私は腰かける。
「…私は煙草の烟はある程度、我慢できますよ」
背凭れに深くもたれて空を見ていると、三好が笑った気配がした。
「この風向きなら、我慢するまでもありませんね」
そう言って、ほんの数センチ程隣に静かに腰かける。暫くすると、フー…と息を吐く音が耳元で聞こえた。
「……Aさんは、今まで英国に居たそうですが」
「ええ」
「英国での恋人や友人は、どうしたんです」
「さぁ、どうだったかしら」
スパイの恋人や友人などは所詮カバー……別れ際には何も告げず、ある日突然、痕跡を残さず消えるか、相手を消すのが一般的だろう。
「その様子だと、恋人も友人も居なかった…でしょうか」
「ええ、残念ながら」
「なんなら、僕がAさんの恋人になりますが…」
三好は無表情にそこまで言って口を閉ざすと、軽く鼻で笑った。「…なんて、冗談です」
「あら、残念」
「そう思って頂けるなら、望みはありそうですね」
三好の白い手から煙草が落ちた。丁度両足の間に落ちたそれを、高級そうな革靴で踏みにじって立ち上がる。
「そろそろ移動しましょう」
差しのべられた手を、形だけ掴んで私も立ち上がった。
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凛々(プロフ) - とても面白かったです！！原作のイメージが全く崩れないっtとりとした雰囲気が最高でした。蝶のくだりは思わず泣きました。素敵なお話を書いてくださってありがとうございます。このお話に出会えて良かったです。 (2019年12月18日 0時) (
レス) id: 2ad6838eaa (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - 燐さん» 返信が遅くなり申し訳ありません！とんでもないです、ありがとうございます！楽しんで頂けたようで嬉しく思います(^^) (2018年10月22日 11時) (レス) id: 6c36d7dbcf (このIDを非表示/違反報告)
燐 - めっちゃ切ない…!文才ハンパないっすね。展開もリアルで面白かったです！ラスト、三好さんの声が聞こえたトコロめっちゃ感動しました！ (2018年10月16日 22時) (レス) id: 6e4e502025 (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - 信乃さん» ありがとうございます！そう言ってくださる読者様のおかげです(;;)最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2018年10月15日 0時) (レス) id: 6c36d7dbcf (このIDを非表示/違反報告)
信乃(プロフ) - 完結おめでとうございます。毎回更新が楽しみでした！楽しく読ませていただきありがとうございました。 (2018年10月14日 21時) (レス) id: 3929cd90dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こな | 作成日時：2017年5月28日 15時
