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第12話 鈍色の盃 ページ12

次の日の講義終了後、食堂で実井とオセロをしていた時だ。
食堂の扉を開くなり私達の横に思いきり腰掛けて、神永は煙草をくれと実井に催促した。

「生憎持っていませんので、他を当って下さい」
「嫌ならそう言え。それより」

神永は急に笑顔になる。

「A、良い報せだ」
「何でしょう?」
「夜外出することを許された」

それまで神永に見向きもしなかった実井が、顔をあげる。

「中佐に頼んだんですか?」
「ああ。一緒に食事したいと言ったら、中尉がいるなら良いとの事だ」
「俺か?」

拍子抜けしたような声がカウンターの方から聞こえる。

「はい、だから、中尉も一緒に行きましょう」

神永は面白がっている様子だ。

「しかし……Aはどうなんだ、行きたいのか?」
「ええ、場所にもよりますけれど」
「どういった場所がお好みで?」
「静かなら、それに越したことはありません」
「だ、そうですよ神永」
「料亭だな。Aの代金はゲームで負けた奴が払う、ってのは?」

威勢よくたてた人差し指を見て、佐久間さんは「まて」と眉間に皺を寄せる。

「そこには俺も入っているのか?」
「勿論」
「貴様らに勝てるわけがないだろう! それに、そんな金はない」
「平気ですよ佐久間さん、自分で払いますから」
「しかし…」

佐久間さんは「…いや…やはり俺が払う」と頭を掻き回した。
それを見て、実井と神永はクスクス笑う。

「決まりだな。二時間後に出発でどうだ?」
「構いませんよ」
「私もです」
「佐久間さんは?」
「ああ、構わん」
「了解」

神永は席を立つと、嬉々とした表情で食堂を出ていった。

「夜戸出が許されてよかったですね」
「ええ。でも、佐久間さんには申し訳ないです」
「気にするな。Aはただ喜んでいればいいさ」
「ありがとうございます」

「しかし、結城中佐は手厳しいですね」
「何の話だ」
中尉が実井に向き直る。

「僕達だけならまだしも、軍人の佐久間さんを同席させるとは」
「仕方ないだろう。大体、軍人である事に問題があるのか?」
「振舞いで陸軍関係者だとバレるかも知れませんから」

佐久間さんの顔が険しくなるのを見兼ねて「設定はどうします」と口を挟む

「…機関員を学生として、佐久間さんは友人、その婚約者をAさんとしましょう」
「婚約祝いで料亭に来たことにしますか」
「それがいいでしょう」
「お、おい…いくらなんでも婚約者の振り等…」

「大丈夫ですよ」私は宥めるように言った。「任せて下さい」

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設定タグ:ジョーカー・ゲーム , D機関 , 三好   
作品ジャンル:アニメ
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凛々(プロフ) - とても面白かったです!!原作のイメージが全く崩れないっtとりとした雰囲気が最高でした。蝶のくだりは思わず泣きました。素敵なお話を書いてくださってありがとうございます。このお話に出会えて良かったです。 (2019年12月18日 0時) (レス) id: 2ad6838eaa (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - 燐さん» 返信が遅くなり申し訳ありません!とんでもないです、ありがとうございます!楽しんで頂けたようで嬉しく思います(^^) (2018年10月22日 11時) (レス) id: 6c36d7dbcf (このIDを非表示/違反報告)
- めっちゃ切ない…!文才ハンパないっすね。展開もリアルで面白かったです!ラスト、三好さんの声が聞こえたトコロめっちゃ感動しました! (2018年10月16日 22時) (レス) id: 6e4e502025 (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - 信乃さん» ありがとうございます!そう言ってくださる読者様のおかげです(;;)最後まで読んでくださりありがとうございました! (2018年10月15日 0時) (レス) id: 6c36d7dbcf (このIDを非表示/違反報告)
信乃(プロフ) - 完結おめでとうございます。毎回更新が楽しみでした!楽しく読ませていただきありがとうございました。 (2018年10月14日 21時) (レス) id: 3929cd90dd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こな | 作成日時:2017年5月28日 15時

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