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｢のんちゃん、流星君。
パパ、今めっちゃ頑張ってるから、
時計の長い針が11の所にきたら来るからね｣
｢ぱぱ、くる？｣
｢来るよ。大丈夫｣
もしかしたら、帰ってこない、
迎えに来ないっていう恐怖を味わったことがあるのかもしれない。
凄く不安そうで、
いつもブロックで遊ぶのに、
2人とも俺から離れない。
｢大丈夫、大丈夫。
先生と何して遊ぶ？
絵本読もっか｣
｢これ｣
のんちゃんが差し出してくれたんは、
乳児に大人気のだるまさんシリーズ。
流星君、これでも大丈夫かな？って思ったけど、
望が読みたいものを、って。
さすがお兄ちゃん。
｢だ、る、ま、さ、ん、がぁ｣
｢どてっ｣
俺の声に合わせて、
のんちゃんはどてって真似してる。
もうみんなこれ覚えてるくらいには読み込んでるもんな。
流星君もなんか楽しそう。
だるまさんシリーズは全部で3冊。
のんちゃんの｢もっかい｣攻撃を受けて、
ほぼそれをローテーション。
｢5回目やで？｣
その時、インターホンが鳴った。
｢あ、お迎え来たわ｣
｢すみません！おそくなりました！！｣
息を切らして駆け込んできた重岡さん。
｢おかえりなさい｣
｢ホンマにすみませんでした！！！｣
｢いえ、大丈夫ですよ｣
｢でも、もう他真っ暗やし｣
｢お仕事、大変なんですね｣
｢はい・・・
でも、それでもこの子達を不安にさせてしまう事になってしまって｣
2人とも重岡さんに抱きついて離れない。
｢これ荷物です｣
まとめてあったものを渡す。
｢ありがとうございます。
望、ベビーカー乗ろ｣
グズグズして、イヤイヤしてるのんちゃん。
不安でしょうがなかったんやろな。
｢先生、1人ですか？｣
｢あ、はい。
6時半までで他は帰りました｣
｢ホンマにすみません｣
｢いえ、でもホンマは規則違反なので、
これは秘密でお願いします｣
｢え、ホンマに・・・
真っ暗やし｣
そう言われて周りを見れば、
当たり前やけど、電気がついてるんは、
この事務所だけ。
一気に恐怖。
｢先生、もし良かったら、送ります｣
｢え？｣
｢電車ですか？｣
｢はい｣
｢ご迷惑かけたし、ご飯でもとか言いたいけど、
多分あかんやろうし、
車で送るのもアウトやと思うんで、
せめて戸締りとか待ちます。
んで、駅まで送ります｣
｢え、そんな｣
｢でも、怖いんやないですか？
ごめんなさい。
見くびってるとかやなくて、
俺がしたいだけなんです｣
｢じゃ、じゃあ｣
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作者名：ななはち
| 作成日時：2024年3月8日 19時
