未完成(JW 赤×緑)

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｢あ、すみません。
今戻ります｣


｢あの、今夜空いてませんか？｣


今日は当直やない。

空いてると言えば、空いてる。


｢なんでしょう？｣


｢良かったら食事にでも、｣


｢あ、えっと、｣


グイグイくるやん。


｢アルファの恋人代理をお探しなんでしょ？｣


さっきの話、聞かれてた？


｢私、西園寺クリニックの長女なんです。
クリニック自体は弟が継ぐんですけど、｣


めっちゃ言い寄られてるよな？


｢なら、自分の人生、存分に楽しんだらええよ。
咲良君の手術カンファレンス始まるから、行くわ｣


アルファの人はプライドが高いしな。


傷つけずにやんわり断りたいねんけど、
俺、やり方知らんねん。


もう逃げるみたいに、会話終わらせてしもた。


カンファレンスルームに入れば、
何人かの先生達が既に座ってた。


手術のやり方とか、術後とか、
色々話し合って、他の子の話も聞いて。


何人かの手術にも入らせてもらう。


やから、手順はちゃんと聞いとかなあかん。


小児科医として、
もっと経験を積まな。


次は、入院中の子ども達の治療について。


子どもの中には、
第二次性徴が早くに来てしまい、
体が順応せず、発作を起こしてまう子もおる。


そんな子どもを見てきたのは少なくない。


やからこそ、第二次性は大切に扱いたいもの。


｢春樹君ですが、オメガだと5歳でわかって、
お母さんとお父さんも憔悴しています｣


｢夢ちゃん14歳。
ヒートの時、アルファに襲われて、
望まぬ妊娠をされました｣


産婦人科とのタッグで、
小児科に受診していた夢ちゃんの今後を話し合う。


愛夏先生も俺の従兄弟。


信頼できる産婦人科医。


東京の中でも、最先端の設備が整っている周産期医療センターで経験を積んで、
こっちに戻ってきた。


｢望まぬ妊娠・・・｣


｢夢ちゃんは産みたいって｣


｢でも両親が？｣


｢ううん。相手が。
アルファであるから、今、汚名がつくのは、ねえ？
やって｣


アルファが優秀で、
オメガは劣ってる。


世界に根強く残る考え。


｢大毅先生｣


｢夢ちゃん｣


考え事をしながら、病棟を歩いてたら、
声をかけられた。


｢私、赤ちゃん産みたいねん｣


目からは、覚悟が現れてた。


母親になったオメガは強い。


｢1人でも育てるから｣


それだけ宣言して、
歩いて行ってしまった。


あの子たちのために、俺は何ができるんやろ・・・

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