2 ページ27
俺が遊んでた公園。
俺がよく通った駄菓子屋。
俺の通学路。
智洋と並んで歩く。
｢うわ、ちっちゃ！
なにこれ。
シーソー？｣
｢みたいなん｣
｢すげえ｣
生き生きしてる智洋が見れてよかった。
お母さんのお腹が大きくなる度、
少しずつ顔が曇ってる気がしたから。
｢まだあるんや｣
駅前の商業施設は、
1階はスーパー、2階以降は服屋さんとか、
色々入ってるねんけど。
まあ、服屋言うても、
おばちゃんとかおっちゃんらが買うような服が売ってある。
｢ここの3階、休憩できるから行くか｣
大晦日でも変わらず営業してる。
中に入れば、
パン屋が隣に、ケーキやら色々売ってる、
そこだけの個人経営的なカフェ。
｢うわ、美味しそ｣
｢パン食べる？｣
｢ううん、パンは食べへん。
おばあちゃんのご飯食べたいから、
ケーキだけにしとく｣
ケーキは食べんねや。
とりあえず、空いてる席に座る。
客は地元のおっちゃんおばちゃん、家族連れ。
智洋はニット帽を脱いで、
周りをキョロキョロしてる。
｢コーヒーホットと、｣
｢あ、フォンダンショコラと、紅茶｣
｢コーヒーと紅茶には、
ミルクと砂糖はいかがでしょうか｣
｢ブラックで大丈夫です｣
｢両方お願いします｣
甘党。
｢なに。
別にいいやろ｣
｢うん。
ええよ、別に俺に関係ないし｣
｢ここも、よく来てたん？｣
｢んー、まあ時々？
おかんが好きやってん｣
｢そうなんや｣
昨日からそうやった。
いや、ずっと前からか。
俺がおかんの話をしても、
穏やかな顔で、
全く気まずいって感じを出さずに、
素直に受け止めてくれる。
｢俺のおかんの話、
ちゃんとしてなかったよな｣
少し姿勢を正して、
俺の目を真っ直ぐ見てくれる。
昨日、家に着いた時も、
みんなでおかんの仏壇に手を合わせてくれた。
｢おかんは、俺が4歳の時に亡くなった。
癌やってん。
昔は癌なんて病気知らんくて、
入院して手術したり、薬飲んだら治るって思ってた｣
｢せやから、5歳の時の運動会には治ってるって思っててん。
おかんも、大丈夫って言うてくれた。
俺はその言葉を信じて、
苦手なダンスも、かけっこも頑張ってん。
せやけど、おかんは来てくれへんかった｣
ちょうどその時、飲み物とケーキが運ばれてきた。
ひと口飲めば、苦い味が広がる。
フォンダンショコラを前にした智洋は、
全くフォークに手を付けず、
俺の話を聞いてくれる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 491人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ko.ko(プロフ) - そんな思いを込めてこの名前にしてみました。よかったら参考にしていただけると嬉しいです。 (2023年1月6日 23時) (
レス) id: d4574ff1d2 (このIDを非表示/違反報告)
ko.ko(プロフ) - 理由としては、大勢から愛されるケーキの一つで、のせるものによって変わった種類になる。そしてスポンジを使ったのよりもサックっと固さがあり、ほかのケーキとはまたどこか違う。でもみんなの幸せになる。 (2023年1月6日 23時) (レス) id: d4574ff1d2 (このIDを非表示/違反報告)
ko.ko(プロフ) - いつも素敵なお話ありがとうございます！ グループ名考えてみました。 tarte (タルト)はいかがでしょう。(続) (2023年1月6日 23時) (レス) @page40 id: d4574ff1d2 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - ななはちさん» え！嬉しいです😭最初の頃の色縛りはどこはやら笑 ちょっとここで青くんが…ドキドキさせますねぇ💚はぁ…楽しみです！！！ (2022年11月7日 22時) (レス) @page20 id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
ななはち(プロフ) - 7129さん» 甘い赤緑、書きたくなりました！colorful1から読み直してるので笑、付き合ってからは甘いのが中心で行きたいと思います！ (2022年11月6日 20時) (レス) @page18 id: ef79629cea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ななはち
| 作成日時：2022年9月26日 23時
