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「さすがにお忙しいですかね」
「……いえ、大丈夫です」
「そうですか、それはよかった」
二宮さんはそう言いながら手帳に予定を書き込んでいる。
「では、明日の十六時でいかがでしょう」
「わかりました。十六時ですね」
私もスマホを取り出してスケジュール帳を開く。
あ、そうか、明日は新しい興信所に依頼に行こうかなって思ってたんだった。
スマホに書かれたスケジュールが目に映ってそう思うけど、別に急ぐことじゃないから後回しにすることにする。
予定を消して、新しく予定を打ち込んだ。
「場所は櫻井カンパニーの本社ですが、最寄り駅でお待ちください。迎えに行きます」
「わかりました、お願いします」
二宮さんが恭しく頭を下げるものだからついつられて同じように頭を下げる。
顔を上げると目が合って、にこりと微笑まれた。
「きっと社長も喜びます。貴女に会えるの、楽しみにしてたので」
「えっ……」
「それでは今夜は失礼します。ぶしつけにすみませんでした。どうぞゆっくりお休みください」
「あの！」
最後に落とされた思い掛けない言葉に聞き返す間もなく二宮さんはアスファルトを靴の底で叩きながら路地を去って行ってしまった。
気が付けば東の空が白くなり始めている。
「……帰ろう」
なんだかすごく疲れてしまった。
明日……正確にはもう今日だけど、が休みじゃなかったら死んでたな。
そんなことを思いながら足を踏み出した。
結局私が一番したいことはと言えば、ピアノを弾くことでもお金を貯めることでもなくて、あの人に会うことなんだろうかと時々思う。
私の日々の中心は今でもそこに在るのかなと思うと大きなため息を吐きたくなるのだ。
自分でも何だったのかわかっていない。
あるいはあの人との日々に名前でも付けば、この気持ちは描きかえられたりするのだろうか。
今はまだ染み付いて離れない。
鮮明な、あの人の影。
色。
音。
はやくわすれてしまいたいのに。
わすれられない日々の記憶。
はやく、違うもので染め変えて。
私を変えて欲しいのに。
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iCHiKA(プロフ) - のりさん» のり様、お久しぶりです！お待たせしてました、久々の今回は「キスしたいだけ」でございます。こちらこそ今回もありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。お楽しみいただければ良いのですが。今回もぜひ最後までよろしくお願いしますね！ (2021年9月8日 21時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - キタ。今回はキスをしたいだけのお話なんですね。しかも思いがけず長編連載。ありがとうございますm(__)m 既に続きが楽しみすぎです。あ、こんにちは。お疲れ様です。余談ですが私にも亜由ちゃん同様カワイ子ちゃん(3人)がいますw (2021年9月8日 16時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年9月4日 16時
