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駅の裏手。
木立の影にひっそりと佇む店の古めかしい扉を開ける。
ギィイと音が響いてお酒と夜の匂いが混じった香りが溢れ出してくる。
人気の少ない店内はまだ薄暗い。
「おはようA、いつもより遅いな」
「寄るところがあったの」
「なに、新しい男とか？」
「そんなわけないでしょ」
「はは、悪い悪い」
軽口をあいさつ代わりに声を掛けてきたのはバーテンの松本くんだ。
堀の深い色男で彼目当てにうちの店に通っている女性客は多いと思う。
本人にも自覚はあるのか女性の相手は上手なのだが、なぜか浮名はあまり聞いたことがない。
顔に似合わず奥手だというのは本人から聞いた話である。
ほんとかどうか知らないけど。
「おはようA」
「おはようございます店長」
「リカコちゃんって呼んでいいのよっていつも言ってるでしょう」
「分かりました店長、着替えてきますね」
「もう、つれないんだから。そう言うところも可愛いわね」
「店長、そこ邪魔です」
「潤ちゃんまでぇ」
おねえ口調で拗ねて見せているのは店長のリカコ、そう言えば苗字は知らない。
あれ、聞いたことあったかな？
まあでも、リカコは本名じゃないと思う。
中世的な顔立ちなので黙っていれば女性に間違われることも多いのだが、しゃべり始めるとその声は結構低い。
ハスキーって言いなさいよ、とリカコさんはいつも言う。
フラフラしていた私を拾ってくれた一応恩人だ。
素性の知れない怪しい女を「ピアノ上手なら何でもいいわ」の一言で雇ってくれた懐の広い人。
従業員にはとても慕われている。
そんな店長の用意したドレスが私の仕事着だ。
今日のものは胸元がぱっくり空いたイブニングドレスだった。
色は紫。
ずいぶん大胆だなぁと思いつつ私は袖を通す。
文句を言う権利は私にはないのだ。
それに、別に誰も私を見てるわけじゃないし。
着替えてフロアに戻るともう一人のバーテンである女の子が出勤していた。
髪を後ろでまとめていた彼女は私を見つけるとパッと笑みを浮かべる。
「A、かわいー！さすが私のカワイ子ちゃん！」
「いい加減その呼び方何とかしてよ亜由ちゃん」
抱き着いてくる彼女にそう言えば亜由ちゃんは不満そうに口をとがらせる。
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iCHiKA(プロフ) - のりさん» のり様、お久しぶりです！お待たせしてました、久々の今回は「キスしたいだけ」でございます。こちらこそ今回もありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。お楽しみいただければ良いのですが。今回もぜひ最後までよろしくお願いしますね！ (2021年9月8日 21時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - キタ。今回はキスをしたいだけのお話なんですね。しかも思いがけず長編連載。ありがとうございますm(__)m 既に続きが楽しみすぎです。あ、こんにちは。お疲れ様です。余談ですが私にも亜由ちゃん同様カワイ子ちゃん(3人)がいますw (2021年9月8日 16時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年9月4日 16時
