絆 ページ19
叔父が言った通り、薫と父は物資を満載に積み込んだ車で祖父の家へとやって来た。
二人の顔を見た瞬間、私の中に張り積めていたものが、“プツリ”と音を立てて切れたのを感じた。
安心？虚脱？何とも表現しづらい感覚。
父は、生まれ育った故郷の変わり様に肩を落としていた。
父『こんなになってしまうんだ…。』
数日、行方不明の親戚を探した父や叔父達。残念な事に、津波の犠牲となっていた。
葬儀を済ませた私達は、東京へ帰る準備をする。
その夜、眠れずにいた私。
ぼそぼそと、低い話し声が聞こえた。
父『和樹の学費は俺が出す。いや、出させてくれ。これからが大変だぞ。それでなくても、長男じゃないお前に親父とお袋の面倒を任せてるんだから…。』
叔父『それは、親だもの当然だろ？兄さん、そんな事負い目に思ってるのか？』
父と叔父の話し声だった。
父『祐樹が進学する時も学費は心配するな。同じように面倒みるから。俺にとっては二人しかいない甥だ。好き勝手して家を出た俺の、少しばかりの恩返しだから。』
叔父『兄貴…。悪いな。ありがたく甘えさせてもらうよ。』
父『子供達には、黙ってろよ。』
扉越しに聞こえる会話に、私の心が和んでいった。
私は、そっと寝室に戻り布団に入った。
薫『眠れないのか…？』
A『うん…。でも、眠れそう。叔父さんと、お父さん久しぶりに二人でお酒飲んでるみたい。やっぱり……兄弟っていいね。』
薫『正直、今回は覚悟したよ。お前の事…。じいちゃんも、全員ダメだと思った。でも…よかった…。』
A『ごめんね。心配ばっかりかけて……。ありがとう。お兄ちゃん。』
薫『だから、気持ち悪いって(笑)お前のお兄ちゃんは(笑)もう、寝ろ。明日は早いぞ。』
薫の言葉を子守唄に、私は眠りについた。
そして次の日、私と和樹は、離れがたい気持ちをそこに残し東京へ発った。
和樹は…、震災で大切な友達も亡くした。助かっても、心には大きな傷を負っていたのだ。
大学の入学式、和樹の両親は出席出来ない。私と私の両親が親代わりとして、見届けた。
桜の枚散る春の日、和樹と私は新しい生活をスタートさせた。
心に抱えるものが、とても大きな……春だった。
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xiulove(プロフ) - この小説が好きです!!!それだけでも伝えたくて… (2019年8月24日 18時) (
レス) id: 855436cca3 (このIDを非表示/違反報告)
xiulove(プロフ) - 返信ありがとうございます。先程も失礼しました。初めて読んだとき、おもいっきりのめり込んでしまいました。それからも急によみたくなり…続きを見つけては読んでという感じでした。無理はしないでください!!!待ってるといいながら矛盾してるかもですが… (2019年8月24日 18時) (レス) id: 855436cca3 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - xiuloveさん» 気が変わったらこのままか更新しますね (2019年8月24日 18時) (レス) id: 46991f216e (このIDを非表示/違反報告)
xiulove(プロフ) - えっ( ・д・)そうなんですか(；ω；) (2019年8月24日 18時) (レス) id: 855436cca3 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - xiuloveさん» ありがとうございます。実は思うところがあり、このまま更新せずに、全部消してしまおうかと悩んでおります (2019年8月17日 19時) (レス) id: 46991f216e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：慧 | 作者ホームページ：http://ameblo.jp/kei3339/
作成日時：2014年5月15日 16時
