悲惨な状況 ページ14
何もかもが流された。
高台から見ていた人達は、言葉を失った。
あんなに大きな家が、バリバリと音を発てて壊れていく。
車はオモチャのように流されていく…。
**『早く逃げてー。早く、早く！』
悲鳴ともつかない声が飛び交う。
成す術もなく見守るしかない私達には、大きな虚無感だけが残った。
余震が続く為、校舎の中にも入れない。
やっと落ち着いてきた頃には、日が暮れていた。
生徒達は一様に、家族や家の状況がわからず不安に駆られている。
ライフラインが寸断され、電気も携帯も固定電話さえ使えない。
生徒、教師、避難住民は、皆校舎に入り夜明けを待つ事にした。
言葉は少ないが、暖房も無い中防寒コートを纏い、身を寄せ合いながらお互いに励まし合った。
和樹と祐樹は、私の側から離れない。
祐樹『父さんや母さんは無事かな…？じいちゃんとばあちゃんは…』
和樹『大丈夫だよ。朝になったら俺が家に行って様子見てくるから、お前はみんなと一緒に行動しろ』
兄として弟を安心させる為に発した言葉。でも、和樹だって心の中は不安でいっぱいなはず……。
私は、二人の手を握った。
ただ黙ったまま、三人で時が過ぎるのを待った。
どれくらいたったのか、時間を見ようとポケットに入っている携帯を探した。
〔あれ？無い……。〕
コートのポケットも全て探したが見つからない。
〔無くした……〕
和樹『姉ちゃんどうした？』
A『携帯……無くしたみたい。どこにも無いの……』
和樹『地震の直後にはあったよね？彼氏からの着信あったし！』
たぶん、子供を抱き抱えて逃げる途中で落としたんだと思う。
A『明日、明るくなったらさがしてみるわ』
それからいくら探しても、私の携帯は見つからなかった。
夜が明けて市街地があるはずの場所は、まるで戦場のように全てが破壊され、瓦礫だらけになっていた。
和樹と二人、祖父家族を探しに家に向かう道はどこも塞がれ、目を覆いたくなるような光景だった。
苦悶の表情を浮かべて亡くなった遺体が横たわる側を、黙って歩く。
固く握られた手を離さないように繋いで…。
不安で押しつぶれそうになる心を、なんとか保ったまま、瓦礫を乗り越え家まで歩いた。
数十分で着く距離を数時間かけ、黙々と歩いた。
泣かない…。泣けない…。
誰が予想しただろうか…。ありふれた日常が、一瞬で消えてしまう事を。
私と和樹は、同じ思いでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 640人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
xiulove(プロフ) - この小説が好きです!!!それだけでも伝えたくて… (2019年8月24日 18時) (
レス) id: 855436cca3 (このIDを非表示/違反報告)
xiulove(プロフ) - 返信ありがとうございます。先程も失礼しました。初めて読んだとき、おもいっきりのめり込んでしまいました。それからも急によみたくなり…続きを見つけては読んでという感じでした。無理はしないでください!!!待ってるといいながら矛盾してるかもですが… (2019年8月24日 18時) (レス) id: 855436cca3 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - xiuloveさん» 気が変わったらこのままか更新しますね (2019年8月24日 18時) (レス) id: 46991f216e (このIDを非表示/違反報告)
xiulove(プロフ) - えっ( ・д・)そうなんですか(；ω；) (2019年8月24日 18時) (レス) id: 855436cca3 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - xiuloveさん» ありがとうございます。実は思うところがあり、このまま更新せずに、全部消してしまおうかと悩んでおります (2019年8月17日 19時) (レス) id: 46991f216e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：慧 | 作者ホームページ：http://ameblo.jp/kei3339/
作成日時：2014年5月15日 16時
