あの日……。2 ページ13
和樹が校舎に入る背中を見送り、校庭の隅から街を見下ろす。
高台にあるその場所からは、遠く海が見えた。
春になれば、桜の花が咲くであろうそこは、年月を重ねた巨木に囲まれていた。
終業のチャイムと共に、校舎からは在校生の騒がしい声が聞こえる。
１つの窓から笑顔で手を降る祐樹を見つけた。
遠くの方から、得体の知れない低く潜もった音がした。それと同時に地面が揺れる。
その揺れは、強く激しさを増していく。立っている事もままならず、私はその場にしゃがみ込んだ。
校舎からは、女生徒の悲鳴が聞こえる。
何かを掴んでいなければ耐えられない程の強い揺れ。
駐車場の車は、まるでオモチャの様に上下に跳ねていた。
一旦揺れが弱くなったかに思えた。しかし、すぐまた強い揺れが襲って来た。
いったい、どのくらいそんな状態だったのか、その渦中にいた私達は、５分にも10分にも感じられていた。
揺れが治まると、校舎からは続々と生徒が校庭に集まる。拡声器を使った教師が点呼を取っている。
和樹『ねえちゃん、大丈夫だった？』
A『うん。怖かった。祐樹は？』
祐樹『ねえちゃん。電話ある？じいちゃん達に連絡つく？』
ポケットから携帯を取りだし、電話をかけるが繋がらない。
和樹『たぶん、停電で家電は無理かも。家に帰ろう。じいちゃんとばあちゃん心配だから。祐樹は先生の指示で動けよ。』
私達は、祐樹と別れ祖父の家へ引き返す事にした。そんなとき、近隣住民が続々と集まってきていた。
市の広報車や消防車から異常を知らせるサイレンが鳴り響く。
坂を降りかけたとき、携帯が震えた。
ユノ『A大丈夫？怪我してない？』
聞きたかった声に安心する自分。
A『大丈夫よ。怖かった……。ユノ、また後で連絡する。』
雑音がする会話は、途中で切れてしまった。
和樹『なに？彼氏？』
ふふっと笑い返した私は、海に目をやる。
A『和樹、なんかおかしくない？』
指差す方向を見た彼の顔がひきつる。
それと同時に聞こえた『大津波警報発令』の叫び声。
和樹『ねえちゃん、戻ろう。学校に戻るよ。』
私は、和樹に急かされるまま来た道を戻った。
途中、小さな子供を二人抱えた女性に手を貸し、なんとか校庭までたどり着いた。
凄まじい轟音に街を見下ろすと、黒く巨大な波が砂ぼこりと共に、全ての物を呑み込んでいくのが見えた。
成す術もなくそれを見ていることしか出来ない私達。
それは、地獄絵図そのものだった。
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xiulove(プロフ) - この小説が好きです!!!それだけでも伝えたくて… (2019年8月24日 18時) (
レス) id: 855436cca3 (このIDを非表示/違反報告)
xiulove(プロフ) - 返信ありがとうございます。先程も失礼しました。初めて読んだとき、おもいっきりのめり込んでしまいました。それからも急によみたくなり…続きを見つけては読んでという感じでした。無理はしないでください!!!待ってるといいながら矛盾してるかもですが… (2019年8月24日 18時) (レス) id: 855436cca3 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - xiuloveさん» 気が変わったらこのままか更新しますね (2019年8月24日 18時) (レス) id: 46991f216e (このIDを非表示/違反報告)
xiulove(プロフ) - えっ( ・д・)そうなんですか(；ω；) (2019年8月24日 18時) (レス) id: 855436cca3 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - xiuloveさん» ありがとうございます。実は思うところがあり、このまま更新せずに、全部消してしまおうかと悩んでおります (2019年8月17日 19時) (レス) id: 46991f216e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：慧 | 作者ホームページ：http://ameblo.jp/kei3339/
作成日時：2014年5月15日 16時
