面影〜ユノside〜 ページ49
あれから、Aの事は心の片隅に隠して スケジュールをこなしていった。
マネージャーもチャンミナも最初こそ腫れ物に触る様に接していたが、徐々に元に戻っていった。
一つだけ変わったのは、不自然なほど彼女の話題をしなくなった事。
まるで、Aの存在など最初から無かったかの様に……。
ある日、偶然顔を合わせた社長と話す機会があった。
この人なら何か情報をもっているかもしれないと感じた僕は、意を決して尋ねてみた。
ユノ『社長、Aの消息は分かりますか?…あの震災から安否が不明だと聞いたのですが……』
社長『あぁ。はっきりした事はわからないが…。私は無事だと信じているよ。戻って来ると約束したからね。信じているよ。』
社長の答えは曖昧なままだ。
結局、僕自身も諦めの様な感情に支配され始める。
一方で、これが夢なら早く覚めてほしいと願う自分もいた。
そして、星が綺麗に見える夜は決まって思い出の場所へ車を走らせた。
僕が初めてAに想いを伝えた…、最後の夜に彼女にプロポーズしたあの場所……。
夜空を見上げて1人想う。
《ねぇ、A。君は今どこにいるの?約束したよね……。必ず帰ってくるって…。
今日も星が綺麗だよ。あの夜、空に手を伸ばして『ほら、掴めそう』って笑っていた顔。
もう一度 僕に見せてよ…。A……会いたいよ…。僕の願いは、ただ君に会いたい…。それだけだ……A……。》
Aがそうした様に、空に手を伸ばしてみる。
届きそうと思ったのは、ただの錯覚で 星は遠い空で瞬いていた。
どこからともなく聞こえる声。
**『ねぇ、見て!掴めそうよ!』
ビクッと体が反応する。
まるであの日のAとの会話がリンクしているようだ。
その声のする方へ顔を向ける。
そこには、Aが微笑んで立っている様に見えた。
ユノ『A……?』
その彼女の肩を抱く男。
それが錯覚だと気付いた時、虚しさが僕を襲う。
会社の中、思い出の場所。テレビ局、街の中。
至る所でAの面影を探している。
似ている後ろ姿を見ればAかと思い、確認するたび肩を落とした。
僕は誰にも見せないように、いつも1人部屋で涙を流した。
そんな様子をチャンミナが気付かない訳がない。
だんだんと感情を閉じ込めた僕は、ひたすらAの面影を追いかけていた。
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そらぞう(プロフ) - はい!楽しみに待ってます! (2014年5月15日 20時) (レス) id: f7e9c2c335 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - そらぞうさん» コメントありがとうございます。あとは、afterstoryの方でそれぞれのお話を書けたらと思ってます。キュヒョンとの絡みもあるかも?しれないですよ。 (2014年5月15日 18時) (レス) id: b16b47566a (このIDを非表示/違反報告)
そらぞう(プロフ) - ホントのラストですか…?お疲れ様でした~。私としてはきゅひょんさんとのラストを期待していましたが、こういう落ち着き方何ですね。長く追い掛けてきて何度も涙しました。ありがとうございました!! (2014年5月15日 16時) (レス) id: 62b339f5e3 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます。只今、ラストを下書きしています。何度も書き直してまして、まだアップできません。お待ち下さいませ。 (2014年5月15日 14時) (レス) id: 35097dfc61 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - ここに来ての初コメです・・・とうとう終わりが来てしまいますね ライブの前日のようなドキドキを味わっています。とっても楽しませてもらいました ありがとうございます!! (2014年5月15日 14時) (レス) id: 01b01bc73b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:慧 | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/kei3339/
作成日時:2013年12月15日 18時