夢から覚めたら…。【SJ】16

少女の顔 ページ14

日本に帰る準備は着々と進んでいた。ただ、肝心な人には まだ喋ってない。

忙し過ぎて話すタイミングを失ったまま 時間だけが過ぎて行く。

番組収録の合間 様子を伺う私に気づいた彼は そっと声を掛けてくれた。

ユノ『どうした？元気ないじゃない』

A『ん…ユノ…近いうちに時間取れる？』

ユノ『珍しいね。Aからそんな事言って来るなんて(笑)いいよ。今夜行く。』

すれ違い様に耳元でそう言った彼は、私の頭を撫でスタジオの中に消えて行った。

今夜……。どんな反応を見せるのだろうか？
あんなに私を大切にしてくれるユノに 日本に帰る事を告げようとしている自分が とても非情な人間のように感じられて気分が沈んで行く。

ボーッと考え事をしていると肩を叩かれた。

振り返るとヘビンが呆れた顔で立っている。

ヘビン『忙し過ぎてとうとう仕事中もボーッとする様になった？』(笑)

A『そんな』(笑)

ヘビン『ヨンスさん、もうすぐ復帰するんでしょ？どうするのAは？』

A『どうしようね。室長が考えてるんじゃない？』

いくら仲良しの同僚でも言えない。

ヘビンの目を見れない自分。

不自然な程の作り笑い。

ヘビン『実はさぁ Aに聞いてほしい事があるんだけど…。今日時間取れない？』

驚いた顔を彼女に向ける。

ヘビン『そんな驚く？まぁ、お互いにプライベートは敢えて触れて来なかったからね…』

A『なに？恋の話とか？』

悪戯っぽく笑う私に彼女は真っ赤になって俯いた。

ヘビン『意外でしょ……』

正直、意外だった。姉御肌で仕事が生き甲斐のようなヘビンが、恋する少女に見えてしまった。

そう思った事は私の心にしまっておこう。


A『ごめん。今日は先約があるんだ。ヘビンの話は凄く興味あるんだけど。近いうちに時間空けるから必ず。』

ヘビン『わかった。連絡待ってる！』

彼女は私に笑顔を向け持ち場に戻って行った。

ヘビンの恋の相手は誰なんだろう？

そんな事より…嬉しそうなユノの笑顔を思い出すと 今夜自分が切り出す話でどんな反応が返ってくるかが気掛かりだった。

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