夏に解けて Ⅴ (ページ2)

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スリーポイントラインでボールを受け取ったのなら

自分が点を決めるつもりで勝ちの攻撃を作っていく

絶対落とさない、絶対に邪魔はさせない

ここに立ち、ここで受けたなら

何がなんでも6メートル離れたあの場所にボールを届ける

｢リバウンド！！｣

お世辞にも今のボールの軌道は完全なものとは言えない

でも、わかるんだよ

指先の力に膝の使い方…

些細なことで全てがわかるし全てが決まる

何より相手のディフェンスの顔と動きがよく見える

｢いや、リバウンドを警戒する必要はねぇよ｣

｢あれは確実に3点貰えるシュートだ｣

体のバランス

指先のボールのかかり具合い

手首の返し

｢オッケー、ピシャリ｣

ボールがゴールへ近づけば近づくほど

Aは嬉しそうに笑った

まだ入っていなくても直感的にシュートの行方はわかる

三井がAのシュートを見てリバウンドを警戒する必要はない、確実に3点貰えるシュートだと確信したように

Aもまた自分の今のシュートに絶大な自信を持っていた

自分のシュートへの自信と、それに合った綺麗なフォーム

何がなんでも決めてやるという得点への執念

それさえあればもう何も怖くはない

｢決まった…｣

スパッと気持ちのいい音を立てて

ゴールを潜り、床へと落ちたボール

Aは一気に相手から3点を奪い取った

｢相手はきっとAをただの1年生だと思って甘く見ていたのよ｣

｢あの子はただ3年生をベンチで休ませる間の穴埋め要因じゃない、立派な中心選手だってのを見抜けなかった｣

まるでその音を聞くのを待っていたかのように

シュートが入ってから5秒ほど静寂に包まれていた体育館

Aが小さくガッツポーズを作ると

それを合図に応援で見に来ていた一般の生徒たちが一斉に歓声を上げ始める

｢流石は中学ナンバーワン選手！！あれはただの噂じゃなくて本当だったんだな｣

｢え、なになにそんなにすごいの？｣

｢神奈川の中学生のトップだぞ、すごいに決まってる｣

入学当初から一部の生徒の間で囁かれていた噂こそが

Aが神奈川の中学生女子バスケットボール選手の中でトップに立ったという噂

それもあり大勢の生徒が練習試合の度に駆けつけて確かめに来ることがあるらしいが

イマイチ信じられていなかったのには理由があった