ログ2:武装探偵社-4 ページ9
たった五日ぶりなのに私の中で勝手に一ヶ月経ってる
＿＿＿
遥がしばらく国木田と談笑していると、敦が弾かれたように目を開けて呟いた。
「ここは……」
「気づいたか、全くこの忙しい時に……」
その呟きに国木田が応じると、敦は上半身を起こしてまた呟く。
「僕、マフィアに襲われてそれから……そうだ、谷崎さんにナオミさんは!?」
「無事だ。隣で与謝野先生が治療中」
国木田の言葉を遮って響いたのは叫び声。
出所は隣の部屋だ。
それは治療をしている部屋である訳で、敦はその叫び声に疑問を零した。
「……治療中？」
何故叫び声が聞こえたのかの疑問には答えず敦に現状を語る国木田。
「聞いたぞ小僧。70億の懸賞首だと？出世したな、マフィアが血眼になるわけだ」
敦はそれを聞いて思い出したように焦り始めた。
「そうです！どどどうしよう、マフィアが探偵社に押し寄せてくるかも」
「狼狽えるな」
しかし国木田は何でもないという風に手帳を捲る。
「確かにマフィアの暴力は苛烈を極める。だが動揺するな、動揺は達人をも殺す。師匠の教えだ」
だが、今の国木田がそれを語るには少し説得力に欠ける。
敦が真顔でそれを指摘する。
「あの……手帳さかさまですよ」
無言で手帳の向きを元に戻した。
「俺は動揺していない！」
椅子から立ち上がって言った。
「マフィア如きで取り乱すか！仮令今ここが襲撃されようと俺が倒す！あれをこうしてこうばしっと動きいい感じにぐっとやって倒す！」
身振り手振りのキレはあるが説明があやふやである。
それもすぐにやめて敦に背を向けた国木田。
「ふん、奴らは直ぐに来るぞ。お前が招き入れた事態だ、自分で出来る事を考えておけ」
扉に手を掛けてその場から立ち去りかけた国木田だが、最後に振り返ってこう言った。
「ところで2人共、先刻から探しているんだが眼鏡を知らんか？」
頭上だ。
国木田が出て行き、敦は自分が起きてから一言も喋っていない遥の方に話しかけた。
「ところで……貴方は？」
「今日、ついさっき入社した八重遥です。これから宜しくお願いします、先輩」
「先輩ってそんな……僕も今日入ったばかりなので敦で大丈夫ですよ」
見たとこ年上のようですし、敬語も外して貰って、と話す敦。
「良いの？それじゃあ遠慮無く。宜しくね敦君」
そう言って笑みを見せた遥に頷き、少し気まずそうに言った。
「ええとそれじゃあ……その、着替えを……」
「ああごめんね！すぐ出るよ」
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作者名：東風谷阿雲。☆ | 作成日時：2022年2月11日 22時
