ログ0:財団にて-3 ページ3
一話書いたら行き詰まる 許せ
___
次の日。
八重博士が荷造りをしているところにエージェント・春沢がやって来た。
「今日もこんにちは八重博士……って、もう出るんですか!?早すぎません!?」
「やあエージェント・春沢。これはただの荷造りですよ」
流石にまだ出ない、と言って彼女はまた荷造りを始める。
「いやあの、まだ出ないとはいえ荷造りするのもまず早くありません?いつ出るつもりなんです?」
まだ目を丸くして問いを重ねた彼。
八重博士は当然のようにこう言った。
「……今週中には出るつもりです、話は通っていますし」
「いや、あの……そうですか」
せめて来週辺りでは、と言いかけたのを飲み込んで疑問を持つのをやめたエージェント・春沢。
うん、多分行動力が高いんだ、きっと。
そして数日後、八重博士の発つ日。
仕事が一通り終わっている複数人が彼女の出発を見送った。
その中にはエージェント・春沢の姿もある。
その中の誰かが言った。
「彼女、現実改変能力のことをうまく異能力だと誤魔化せるかな」
八重遥には他の財団職員とは違うことがある。
それが現実改変能力、文字通り現実を自分の思った通りに変える能力だ。
例えば現実改変能力者が「そこに消しゴムがある」と思えば消しゴムが出てくるし、「消しゴムはここに無い」と思えば消しゴムは消える。
何でもありな…まあ実際には現実改変者にも得手不得手、それからスピードや範囲もあるので万能ではないが、そんな能力なのだ。
ヒューム値、というものがある。
これはある範囲における現実性の強度や量を測定する方法、そしてその測定した値。
基本的に普通の状態のヒューム値は1、普通の人間の持つヒューム値も1である。
だが現実改変者は周りの現実性を薄くして、それでいて自分の現実性が少し普通の人より高い状態にある。
周囲のヒューム値/個人のヒューム値で表記されるそれに、八重博士は0.5/5という数値が当てはまる。
通常は確保、収容、保護を目的とする財団も現実改変者は殺害の方向で考えているが、彼女は害意を持っているわけでも無し、財団への忠誠も厚い。
なので厳しい忠誠度チェックを行い、更には財団がヒューム値を任意の値に留めるために作った道具"スクラントン現実錨"を小型化して身に付けさせて現実改変能力を封じ、それでようやく財団職員として普通に職務を行えているのだ。
現実改変能力は異能力ということにするには相応しい。
皆が彼女を推薦したのはこれが理由だった。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:東風谷阿雲。☆ | 作成日時:2022年2月11日 22時