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 某月某日。果てない宇宙の中に浮かぶ小さな星が、終末を迎えようとしていた。栄えていた街々は悉く廃れ、あらゆる動植物が姿を消していく中、見るに堪えない化物達だけが我が物顔で己の活動領域を広げていく。
 そんな寿命を迎えようとしている世界の中、ある兄弟が再開を果たしていた。
 褐色、黒髪という共通点こそあるものの、それでも二人の男は正反対だった。金属の四肢を持つ兄は透き通る海のような目を柔らかに細め、見る者に悪魔を思い浮かばせる刺青を全身に刻んだ弟は死を思わせる灰色の目を忌々しげに歪めている。

「おはよう、兄弟」

 敵意を剥き出しにしている弟に対し、少しばかり言葉を探した後に声を掛けた。途端に敵意を殺意へと変えた弟は何処からともなく黒い刃を取り出すと躊躇いなく首を狙い斬りかかった。刃が彼の肌に触れた瞬間、弟の体は腐敗し、塵となった。直後、重たい扉が勢い良く閉まる音と幾つもの施錠の音が鳴り響く。一人残された兄はといえば、首筋を摩りながら困ったように眉を下げていた。

「兄弟。これでもう何回目だろうね。まだ僕の声を聞いてはくれないのかい」

 海中に沈んだ巨大なコンテナの中、彼は呟く。座り込み寄りかかった黒い変成岩から肌を刺すような冷たさが伝わる。中は空洞になっており、その温度はマイナス百八十度を保ち続けている。この中で弟は体が完全に再生されるまで呼吸を止め、全ての身体機能を停止して眠り続けているのだ。
 土地を枯らし、己に降りかかる力の全てをそのまま相手へと返す兄。幾度でも蘇る、人間離れした生命力を持つ弟。一見ヒトの身を持つ彼らもまた、呪いとも呼べる力を持つが故に化物とされた者だった。

「兄弟。僕の話を聞いてくれないか」

 彼が蘇るのは早くても六時間後。長ければ二十五年後。それを何十何百と繰り返して尚、二人の間に深く刻まれた溝は一向に埋まる気配を見せない。それでも血の繋がった弟へと、何度でも声を掛け続けた。

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作者名:転生 | 作成日時:2017年4月8日 16時

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