嘘ツキ彼女とニセ彼氏。

Episode 45 ページ46

｢え、中間の兄貴、警察官になるん？｣






夕方も来た、公園の青いベンチ。

当たり前やけど、こんな時間やし誰もおらへん。





遠くで鳩みたいな鳥の鳴き声がホーホー、と聞こえる。






本日2回目のレモンティーを買ってくれる重岡は、いつものようにほうじ茶を飲みながら話を聞いてくれた。







吹き抜けていく風は少し肌寒い。







｢かっこええやん｣







｢警察官とか、アホやん！｣







｢それ、全国の警察官に失礼やから｣







｢だって｣




考えたらまたじわじわと涙が出てきた。







｢だって、殺人事件とか捜査するんやろ？
刑事ドラマとかでよくあるやん！
犯人追い詰める途中で殺されちゃうとか！｣






口に出すと、我ながら子どもみたいなわがままやと思う。




でも、お兄ちゃんがいなくなるのが悲しい。




物理的な問題だけでなく、もしお兄ちゃんが大怪我をしてしまったら。

死んでしまったりしたら。



私はそういうことが心配でたまらない。




重岡はバカにするかなって思っとったけど、穏やかな顔で笑っとった。




｢大丈夫やって。
そういうんは、刑事ドラマ以外であんまり聞かへんやろ？｣







｢確かに…そうだけど…｣








｢やろ？それに、みんな厳しい訓練を積んだ人たちなんやから、そこらの人よりよっぽど丈夫やって｣








｢…そっか？そっか。そうかも｣







私ってかなり単純なんかもしれん。



重岡の言葉は胸にストンと降りてきて、なんかすごく安心できた。




｢そこまで心配せんでも大丈夫やって。
こういうん、言うの照れるんやけどさ｣





一瞬言いにくそうに頬をかいた重岡は、早口で話した。




｢もし兄貴がいなくなって、今まで相談しとったこととか
誰かに聞いて欲しくなったらさ。俺がいるから。聞くで
中間の辛いこととか悩みとか、そういうん、全部聞くから｣








そう言った重岡は、こっちが恥ずかしくなるぐらい照れとった。





…さすがに笑ったら悪いよね。





｢あはは｣




と、思ってんけど我慢出来ずに吹き出してもうた。







｢おっまえ…俺がどれだけ真剣にっ！
もう嫌や！アヒャ｣




そういう重岡も途中から笑っとった。






なんだかおかしくって照れくさくって、何がおもろいんかも分からへんけど、しばらく2人で大笑いした。




素直やない私は笑って誤魔化してしまったけど、重岡の言ってくれた言葉はホンマに嬉しかった。





重岡に話してよかったな。

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