4 ページ35
ふと、そんな学生時代のことを思い出した。もともと日本という国に生まれ、両親からの虐待を受け、それなりの社会経験を受けた私は、正直シリウスの過保護は一時的であると思っていた。すぐに飽きるだろうと。愛と言うのは有限であり、すり減っていくものなのだと。私は永遠の愛なんていうものは物語の中だけだと思っていた。それを経験するだけの長い年月を前世で生きることもできなかったし、実際に両親からは愛を受け取ることができなかった。
しかし、付き合ってから今の今までシリウスはこんな調子だ。正直、日ごろから過保護であるシリウスは、生理中となるとその過保護に拍車がかかるのだ。
同棲し始めてから２年。結婚式を挙げたのがつい３週間前のこと。休日である今日の朝、いつものようにシリウスと一緒にキッチンに立とうとするが、なぜかさっさとソファに座らされてしまった。私が不思議に思っていると、彼はさっさと朝食を作って持ってきてくれた。フレンチトーストだ。そして持ってきたのはココア２つ。朝は基本的にコーヒーなのに。
何でだろうと首を傾げつつ、暖かいココアを飲む。彼は魔法でブランケットを引き寄せ、私の膝の上に乗せた。そこでようやく気が付く。これは私が生理になったときの対応だ、と。
「シリウス、まだ生理来てないよ」
「でも今日来るだろ」
え、そうだっけ、と私は言葉をこぼす。式の準備やらで忙しくしていて日付感覚がくるってしまっていたようだ。私は急いでトイレに行って、パンツをサニタリーショーツに変え、ナプキンをつけた。そう気が付いたら下腹部が重たい気がする。リビングに戻り、新聞を広げるシリウスの膝の上に乗って彼にお礼を言う。気が付けば、暖炉に火がついている。
生理中の私の扱いは完璧に心得たシリウス。新聞をぱさりと閉じて左腕を私の下腹部に回し、手のひらで温める。１１月初旬の朝はすっかり寒くなった。私は膝にかかっているふわふわのブランケットをぐいっと引き上げた。
シリウスは私のお腹を支えたまま上半身を前に倒し、テーブルに置かれているテレビのリモコンを右手でとる。そしてテレビの電源をつけた。
「寒くないか？」
「うん、大丈夫」
ありがとう、ともう一度お礼を言うと、彼は当然だというように笑って私のお腹をさすった。暖炉から暖かくて柔らかい風がこちらに降り注ぐ。私はその温かさに身をゆだね、シリウスに体を預けた。
ラッキーアイテム
マールヴォロ・ゴーントの指輪
今日の呪文学
ルーモス（光よ）
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 177人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おたけ - この作品を最後まで書き上げてくださりありがとうございます！面白すぎて、１日徹夜して読み切りました！こんな素敵な作品に出会えて本当に感謝です！ありがとうございます！ (7月20日 18時) (
レス) @page43 id: 277811df6e (このIDを非表示/違反報告)
アネモネ(プロフ) - 幽蘭さん» コメントありがとうございます！こちらこそ、読んで頂きありがとうございました。読み返すと誤字脱字が多かったりちゃんと伏線になっていなかったりで初心者丸出しですが…。また機会がありましたらどこかで！ありがとうございました！ (5月25日 23時) (レス) id: cfb2af5982 (このIDを非表示/違反報告)
幽蘭(プロフ) - 最後まで読ませていただきました。素敵な作品ありがとうございました！！ (5月24日 12時) (レス) @page43 id: 1d533b6371 (このIDを非表示/違反報告)
アネモネ(プロフ) - RIKOさん» こちらこそ、読んで頂きありがとうございました！素人の妄想を文字にしただけのものですが、楽しんでいただけたようで嬉しいです！またどこかで！本当にありがとうございました！！！ (5月23日 0時) (レス) id: cfb2af5982 (このIDを非表示/違反報告)
RIKO(プロフ) - 本当にありがとうございました！！ (2023年3月25日 2時) (レス) id: 2f1eb9db7f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アネモネ | 作成日時：2023年2月25日 14時
