プロローグ ページ1
彼女のことは、腰まである長い三つ編みくらいしか、覚えていなかった。
高校２年、春。
『はぁぁぁぁぁ……』
俺は寝坊して始業式に遅刻したため、校門のところで体育座りで座りこんでいた。
『始業式の朝に目覚まし時計壊れるってどうなんだ……』
…ん？
道路の向こう側に、この制服を着た女の子が、走ってきて、そして止まった。
あの子も遅刻したのかな、かわいそうに。
なんて思いながら、膝の上に組んだ腕に顔を埋め、ちらと目だけで彼女を見つめた。
セーラー服のジャバラが２本線ってことは、俺とおなじ高校２年か？
…でも、あんなやついたっけ…？
肩までの髪を上半分だけポニーテールに結んでいる。
そして、何を思ったのか、準備運動を始めた彼女。
少し気になって、門の内側から見やすいように身を乗り出した。
まず彼女は、鞄を道路の向こう側から遠投。
２メーター近くある門を簡単に通り越し、さらに着地後、その鞄は１０メーター程スライディングしていった…
あんぐりと口を開けてそれを見ていた俺が次に見たのは、向こうからいきなり助走を始めた彼女だった。
そして、門の上に左手をかけ、それを支えに門を飛び越えた…!!
しかし、そんな衝撃的なことが目の前に起こっているのに、そこは思春期男子。
見逃せないものがこの目に写ったのだ。
『あ………白。』
その声が聞こえてしまったのか、鞄のもとへ行こうとした彼女は足を止めた。
やべっ!!と思って口を塞いでも、もう遅かった。
くるりと向きを変え、すったすったとこちらに歩いてきた。
？「……栗本つかさ、高２。少し、いや、とてもイラッときました。」
……まぁ、そこからはご想像におまかせしよう。
『…あの子、栗本っていうんだ…』
門のレンガ塀に出来た凹みから顔を引き離しながら、俺はそう呟いた。
あれ…景色がホワイトアウトしはじめたぞ……？
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作者名：篠屋裕季 | 作成日時：2015年8月17日 13時
