110.冗談半分 ページ14
「…馬鹿いえ。」
「ですよね、なんかすみません。」
ははっ、と乾いた笑い声を出した彼女に俺は眉間に皺を寄せるとぐるぐると色々聞きたいことが頭の中を巡った。そういえばそうだ、俺が聞かないといけないことはこれだった、とも本来の目的も思い出す。
しかしなかなか人のプライベートなことに足を突っ込む質問というのは切り出しづらい。いくら自分たちが少々巻き込まれてることとは言えどもそんなすらすらと言葉が出てくるわけでもない。
「珍しいな、お前にしちゃ…そんなこと言うなんて。もうお見合いの話は忘れましょうって言ってただろ?」
とだから逃げるような質問しかできない。しかし彼女は「そうですねぇ…。」とため息を漏らすように言うと、何かを思い出すようにまた笑った。
怪訝そうにその姿を見ていた俺に彼女は目を合わせると、「私は土方さんのことが好きです。」と突拍子もないことを言い出す。
「…は?」
「私は土方さんのことが好きらしいです。」
「らしい?」
「ある人に言われました…私は土方さんのことが好きなんだ、って…」
ある人、とは誰なんだと聞こうとしてやめた。そう、もう答えは分かっているじゃないか土方十四郎。しかもまたとないチャンスなのではないか?こいつの本音を聞き出す。
自分が尋ねられなかった話題を彼女の方から意図せず振ってくれたのだ。いや?結婚話を出したのは俺だから結局俺がいい仕事をしたのか?数分前のらしくもなかった自分ありがとう!
と一人心の中で自分自身へお礼を言いながら、ドキドキしている心臓をおさめた。びっくりして咥えていたタバコも落としてしまったが、引き出しの代償と思えば軽いものだ。45円くらいだろう。
「それは…お前の本心か?」
「…分かりません。確かに土方さんのことは好きなんですけど、それが異性として好きなのか、ただの仕事仲間として好きなのか…。」
うつむいた彼女は険しそうな表情で。持っている缶コーヒーは買ったがいいが手を付けられなかったのか、それを手の上で転がしている。
「恋愛として好きならお前は相当なテクニシャンだな。」
「…どうしてですか?」
「俺に意識させてオトすっつー戦法だろ?」
「…からかってます?」
「当然。」
「サイテー。」
「土方さんもそんな冗談言うんですね。」と口を尖らせた彼女。俺は新しいタバコに火をつけると、ゆらゆらと風で揺れるその煙を目で追った。
184人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
narumi(プロフ) - いつと楽しく読ませてもらっています(*^^*)とても続きが気になります♪応援しています! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 5cd2b1b9c5 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 続き気になる!楽しみにしてます! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 9be2d294c2 (このIDを非表示/違反報告)
気空(プロフ) - とても素敵なお話でシリーズ一気読みしてしまいました……! 夢主と銀さんの絶妙な距離感の変化がたまらんです。こういう夢主ちゃんあまり見かけないので巡り会えて嬉しい……陰ながら応援しております! (2021年2月3日 7時) (レス) id: 413d1f6892 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲 | 作成日時:2021年2月1日 20時