3 ページ25
「ごめんなさい、それはダメなの。」
表情が語っていた言葉をサクラはそのままそっくり総悟に返した。「何故?」と聞いても桜は答えてはくれなかった。
だけれども、落ちてきた桜の花びらを一枚、俺に渡した。これが答えだ、とでも言うように。
「5年間、ありがとう。」
桜はそう言って笑った。その笑顔に涙はなかった。何故か総悟だけが置いていかれている、そんな気がした。だけど、総悟はくるりと背中を向ける彼女を追うことも、名前を呼ぶこともできなかった。
ひどく後悔はした。
あの時手を取っていればもう会えないなんてことはなかったのだろうか。
総悟が倒れて数日が経っていた。もう体の方は心配ないのか総悟はいつものように見回りと言う名のサボりに出ていた。
だけど、どこへ言っても何をしていても頭はずっと桜のことだけだった。柄にもねぇや、とため息もつきたくなる。
「みたらし一個…」
「へい!まいどありぃ!」
行きつけの団子屋に腰を下ろす。少しだけ広場から離れたこと団子屋はいつでも静かで、それでいて寂しく感じたことはなかった。程よい居心地だ。
総悟は店先の長椅子に座ってぼんやりと広場を見つめていれば、何やら大行列が歩いて来る。袴姿の男と、白無垢姿の女。
「おお!壮観だねー、今日は坂本んとこの坊ちゃんが結婚式あげるっていうてたからなぁ、きっとそうだな!」
結婚式…総悟には程遠い言葉のように感じだ。18にもなれば結婚するのなんて当たり前の年なのだが、何しろ真選組の中で結婚しているやつなんてそうそういない。
近藤さんなど、むしろ婚期を遅らせてしまった代表なのではないだろうか。
ぼうっとその行列を見ていれば、急に突風が吹いた。白無垢姿の女の綿帽子が飛んだ。
その瞬間、総悟は走り出した。行列を見張る警備員を押し通し、その手を掴む。
ー桜!
「な、なんだね君は!俺の花嫁に、さわ「どなたです?」
新郎が今にも俺に切りかかりそうなところを女、そう、桜が止めた。だけど、その言葉は総悟に突き刺さる。…桜じゃない?
「…ああ、虫がついていたのですね、すみません。ありがとうございます。あなたのお名前は?」
「真選組、1番隊、隊長…沖田総悟…。」
「沖田さん…。」と呟いた彼女。そういえば俺は彼女に名前を教えていただろうか。名前を呼び合える、なんてただの妄想だったのか。
30人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
咲(プロフ) - 雪華さん» 是非、私の勝手な都合で書いている短編集を読んでいただけると幸いです。 (2019年6月2日 13時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - 雪華さん» おそくなり、すみません。私は自分の好きなようにお話を書いておりまして、お願いされる形で書くのは正直読んでくださっている読者様方をがっかりさせそうで自信がありません。ですのでそう言ったお願いはできかねます。申し訳ありません。 (2019年6月2日 13時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - お願いあるんだけど良いですかな?ドラゴンボールのキャラ×18歳のメイ・チャンの恋愛短編集を作って貰いますかな?メイ・チャンは悟空達の仲間で子パンダのシャオメイと一緒で長男のグリードと次男のエンヴィーの妹を設定で (2019年1月15日 20時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲 | 作成日時:2017年9月17日 0時