笑顔【神威】1 ページ47
「弱い奴に興味はないよ。」
そう言って目の前の敵を笑ってばたばたと倒していく幼馴染に私は恐怖さえ覚えたのがちょうど10年くらい前だった気がする。
今はもう慣れてしまったのか私は傘からその光景を見るだけで、そう見るだけで何も思わない。
「神威ってどうして殺す時にニコニコ笑うの？」
「不気味。」と最後に付け加えるようにつぶやいた私に神威は同じように笑った。
それがなんだか「お前も隙があれば殺すよ。」と言っているように見えて私は本当にいつか殺されるんじゃないかという錯覚さえ覚えた。
それからだ。神威が化け物にしか見えなくなったのは。
夜 「ほう…いい女を連れているではないか、神威。」
男の桃源郷、吉原。そこを統べる男こそ、夜兎の王、夜王鳳仙であった。
両脇に女を置き、神威と対峙する夜王だったけれどもどんなに視線を向けられても、どんなに不気味に笑おうと全く怖くなかった。
神 「ダメですよ、旦那。そいつは俺の女ですから。」
�爐い弔�殺すための��
そっと私は自分の中でそう付け加えた。神威にそんなことを言われたのは初めてだったし、私のことを気に入っている態度なんてものも見たことがなかったから、少しも動じなかった。
ただ、ただ、私は幼馴染として、そんな風にしか神威に思われていないのがほんの少しだけ悲しくて、やっぱり恐ろしかった。
目の前にいるのは、1人の敵と、1人の仲間ではない。
2人の敵なのだ。隙を見せれば私はあの化け物たちにやられてしまう。
戦闘が始まる中で逃げる子供を見ても私は追いかける気にもならなかった。
神 「どうして俺を敵みたいに見てたの。」
阿伏兎を担ぎながら隣で傘をさす私に神威は真面目な顔つきでそう尋ねた。
「…え？」
神 「鳳仙の旦那と同じ目つきで俺を見てた。なんでだか気になってさ。」
神威の顔つきは変わらない。
私はそんなことを尋ねてくることよりもなぜ神威が笑っていないのか、ということに疑問を覚えた。
いつだって彼は私に笑いかけて話すのに。
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作者名：咲 | 作成日時：2017年1月16日 1時
