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「兄弟…だからなのかな。」
神威が何やら銀髪の侍と話をしているのを横で見ながら私は呟いた。鳳仙はもう、吉原の太陽と呼ばれる女の膝下で寝ている。
私は差したままだった傘を少しだけ深めに落とした。そういえば、阿伏兎が下でのびてるやもしれない。
殺すのかな、なんて思いながらも同情なんかも、悲哀することもない。阿伏兎も悪いし、ここはこう言う世界だ。
それで、私もそうなるかもしれないという事実があるのだ。
ーでも、妹ちゃんは絶対殺されないんだろうなぁ…ー
なんて。
くだらないとは思うけど、これには確信がある。
さっきのときだって、神威は妹ちゃんを殺そうと思えば、殺せたのだ。でも、現に妹ちゃんは生きてるし。
暴れながらもメガネの男の子に抑えられて何もできない妹ちゃん。紅の髪と青い目、そして顔立ちが神威の妹であると訴えている。
私は自分の真っ黒な髪の毛をすくい、すぐに風に乗せた。こんなことしたって意味はない。
話が終わったのか、神威は私の方へ歩いてくる。
後ろではまだ妹ちゃんが騒いでいるし、その辺の人たちも神威を睨んでる。
「…いいの?」
もう一度そう、尋ねた。
確認する必要もなかったのかもしれない。むしろ、こんなことを聞いてしまったら自分の傷口をえぐるだけだ。
それでも私は神威の目をしっかりと見つめてそう聞いた。
やっぱり神威は「何が?」とにっこり笑って答えてはくれなかったけど、答えないことが答えだった。
少しだけ殺されない妹ちゃんを恨めかしく思い、殺されればいいのに、なんて思う。
どうせ敵だし。
それでも多分殺されることのない妹ちゃんを私はちらりと最後に横目で見ながら神威の後に続いて、屋根を降りた。
少しだけ悲しさを交えながら。
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作者名:咲 | 作成日時:2017年1月16日 1時