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5.2つの派閥 ページ7

少しばかり雲行きが怪しくなって来た頃にAは頓所についた。そう言えば、今日は近藤が江戸から離れると言っていた。

Aは少しだけあがった息を整えて、頓所の自室に向かった。その途中、なにやら見覚えのある栗毛。

「君はどちら派なんだい?」
「俺ぁ別にどちら派でもねぇや。俺は副長の座が欲しいだけだ。」

眼鏡を少しあげながら総悟の返答に笑った伊藤。Aは総悟が本気でそう思っているようには思えなかったが、だからと言って近藤以外についていこうという気がないようなことも気がついていた。

なにやら彼には彼なりの考えがあるのか、その考えはAにもわからなかった。

総悟と伊藤が別れたのち、伊藤はAに気がついていたのか、すっとAの前に立ってきた。

「君はどちら派なんだい?」

少し笑いを含みながら、先程総悟に尋ねた時と全く同じ質問をした。

「どちら派?」

わけが分からない、というような顔をしてAは質問を返した。ーが、本当にAは質問の意味が分かっていなかったらしい。伊藤は笑い顔のまま、「伊藤派か、土方派か。」と続けた。

「伊藤派、土方派…?どういうことだ?真選組は今2分に分裂しているのか?」

近頃は土方の行く末ばかり追っていたからか、Aにはさっぱり真選組今どうなっているかなど分かっていなかった。

もともと来たばかりで、誰がどの立ち位置なのかということも主なことしか知らなかったものあるかもしれないのだが。

Aは怪訝そうな顔して、伊藤を見つめた。伊藤はまだ笑みを絶やさない。

「君は、土方君がいた頃にきた。その時の君の隊士の受け入れ態度はどうだったかい?全然相手にしていなかったろう?女だから、と。所詮今の真選組はその程度なのだよ。性別ごときで逸材を潰そうとする。」

「そうだろう?」と伊藤は満足そうにAに聞いた。しかしAは首をかしげた。

確かに自分の入隊の時はえらい言われようだった。しかし、その時、土方は一つも口を出さなかった。静かに酒を飲んでいるだけで。

「君は、伊藤派に来るべきだ。僕の下につけば、君を悪いようにはしない。」

くつくつと笑い声をあげた伊藤。Aは少し黙り、考えをめぐらせているようだった。しかし、すぐに答えは出たのか、真っ直ぐ伊藤に向かった。

「私は、松平から雇われた。私は松平、私の信じる人の信じる人を信じる。」

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作者名: | 作成日時:2017年5月15日 15時

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