【ハク千】大切なモノ[第一篇]【千と千尋の神隠し】

憂鬱な1日 ページ6

・・・・・

耳元で


聞こえる


聞こえる……


私を呼ぶ声…


・・・・・・


ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ


千「ん、ん〜〜〜〜」


千「また…。」


まただ。また同じ声。

「千尋」と呼びかける声。


千「最近多いなぁ…」


昨日よりも確実に強さを増した雨が窓を叩く音が聞こえる。


セーラー服に着替え、
お気に入りのゴムで髪を結わえ、
適当な朝ごはんを口にする。


いつもと何ら変わりない朝。


ただ持っていく物に
替えの靴下と傘が増えただけ。


千「長靴がいいんだけどなぁー…」


引っ越してきた時に持ってきた長靴はとうに小さくなってしまっていて、
知らないうちにお母さんに捨てられていた。

新しく買えばいいという話だが
いざとなると面倒に感じ、毎度雨の日に軽く惜しむというだけなのである。


千「いってきまーす」


誰もいない家に挨拶をして
千尋は玄関を出た。


千「うわっ！！」


思いの外風が強くて驚く。


飛ばされそうになる傘を必死に掴みながら
学校へと向かった。



・・・・・


友達「千尋！千尋ってば！」


千「へっ？」


ずっと窓から外を眺めてぼーっとしていたら
友達の明日香が私の肩を叩いた。

明「何ぼーっとしてんの！プリントプリント！」

千「あ、あぁ！ごめんごめん…」


手元には前の席から回ってきた宿題のプリント。

後ろの席の子たちに手を合わせてごめんごめん…という素振りを見せて
慌ててプリントを手渡した。


鐘がなり、授業が終わる。


明「今日は今朝からぼーっとしちゃってどうしたの？」

千「いや…別に……」

明「あぁっ！もしかしてついに千尋にも好きな人が！！」

千「へっ？！いやそんなんじゃないってばぁ〜」

明「髪ゴムもいつもと違って随分綺麗じゃない！誰なの、教えなさいよっ」

千「違うの！本当に違うんだってば」

？「荻野」

あたふたする私の名前を呼んだのは
佐藤くんだった。

佐藤蓮。このクラスで、密かに女子たちに人気のある男子の1人だ。

私と話をしていた明日香がそっと頰を赤らめる。


明日香はずっと佐藤くんのことが好きらしい…。
私には恋なんてものはよく分からなくて
明日香の恋愛相談などまともな返しができないでいた。

千「どうしたの？」


佐「ちょっと…話があるんだけど。」


千「え…でも」

佐「いいから。こっちきて。」

強引に腕を引かれ教室の外に連れ出される。

明日香の泣きそうな顔が
横目に見えた気がした。

どうしたらいいんですか…？→←学校で

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す