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ハクの決意 ページ24

部屋を出たハクの頰を

誰にも気付かれないくらい静かに
一筋の涙がつたった。



ハク「愚かだ……本当に…愚かだ…。」


何故こんな感情を抱き
抱かせてしまった。


千尋が異世界の存在だと最初から知っていたにも関わらず

触れようともがき

苦しみ

再会に喜び

彼女にこの感情の正体を
知らせてしまった。


私はどうするべきなんだ。

側にいてやれない、
千尋が恐怖に晒されている時さえ駆けつけることもできない、

何もできない。


五年前とは比べられないほどに膨れ上がったこの感情さえなければ…こんなに苦しむことなどないのに。


千尋を抱きしめる度に後悔する。

この行為が一層別れを辛くさせないか?と。

でも私と千尋で共有できるのはこの時間だけで

あと何度か太陽がこの空を横切れば



今度こそそれは永遠の別れ。



ハク「…俺は…何がしたい……。」


出来ることならこの心を引きちぎりたい程。

自分が憎くて、憎くて。


涙が零れないよう上を向いて目を閉じる。


千尋がこの先また自由に笑うことができるなら
この身が犠牲になろうと構わない。

それで千尋が哀しもうとも
それはここにいる間だけの一時的なもの。

トンネルを抜ければ思い出せない記憶となる。


そう。記憶は鮮明な物ではなくなっていく。

私の存在を感じたとしてもその正体は分からない。


千尋に忘れられることが怖いか?

それとも忘れないでほしいという願いか?


そんな情けない思いや自分の願望など捨ててしまえ。


ハクはその場にしばらく立ち尽くし

千尋と自分の結末を考え、考える。


そしてハクは
自分なりに考えた結論を作り出した。

これが正解なのか
納得できるものなのかも分からない。


でも千尋を守りたいから。
幸せになってほしいから。


私に抱いている感情を忘れ
その宛先を他の者に変えられるように。


決して私も千尋も幸せばかりではない。

でも千尋の不幸を私の幸せと少しでもすり替えられたらそれでいいじゃないか。




…これでいいだろう?



きっとこれでいい。



ハクは一つ、莫大な決意をして

湯婆婆の元へと向かっていった。


今度こそ堂々と。

強く、強く。


感情が揺らがないように
手を握りしめてグッと堪える。


千尋に恋をし千尋を愛した。


愛とは自分を犠牲にしてでも相手の善に尽くすことだと

そう誰かが言っていたな。

きっと間違っていない。


一度愛してしまった千尋の生命


最後まで
最期まで


愛し貫かねばならない。

自由へ→←この時間だけでも



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設定タグ:千と千尋の神隠し , ハク , ジブリ   
作品ジャンル:恋愛
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やっさん - この作品、完全に映画の続きの設定ですね。千尋がハクと再会し、千尋がハクとの恋におちます。切ないこのだい一篇の結末ですが、まだまだ本番はこれからです!千尋の両親の運命は?続編お楽しみに!! (2018年8月12日 20時) (携帯から) (レス) id: 6ef490f023 (このIDを非表示/違反報告)
airi - な、涙が止まりません・・・、この作品最高です^^ (2017年1月4日 3時) (レス) id: ccd59f3af1 (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - ふゆきさん» 返信遅れてしまってごめんなさい…!最後まで読んでくださって本当にありがとうございました(´;ω;`)嬉しいお言葉励みになります、ありがとうございます! (2015年2月21日 15時) (レス) id: 3184e8d971 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆき(プロフ) - 最後まで見て感動でいっぱいでした。 (2015年2月9日 23時) (レス) id: 83691007b7 (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - 楚誉さん» そんな事言っていただけで嬉しい限りです!いつも見てくださっているんですね、本当にありがとうございます(´;ω;`)続編にも突っ込みそうです…これからもよろしくお願いします!! (2014年12月8日 13時) (レス) id: 3184e8d971 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さき | 作成日時:2014年11月29日 15時

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