【ハク千】大切なモノ[第一篇]【千と千尋の神隠し】

朝の空気 ページ15

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千「ん……うわっ！！」

見慣れない天井に起きた途端驚く千尋。


そうだ…私昨日から…。


隣を見てみるとハクはいなくて
寂しさがこみあげる。


千「もうお仕事行っちゃったのかなぁ…。」


湯婆婆はまだハクを手下として扱っているのだろうか。
また5年前のあの日のように…酷い仕事をさせられているのだろうか。


軽く身なりを整え部屋の外に出て、リンさんたちがいる部屋へ向かう。


そこにはあと2、3人眠れるスペースが残っていた。


千「あぁっ！！リンさんなんで……」


疑問には思ったが
ハクの腕の中で眠りについた昨夜の幸せを味わえたのは彼女のおかげである。

千尋は昨夜のことを思い出して頰を赤くしながらも、リンに感謝していた。


そういえば、来た時に正面の玄関を通ってきたからこっちの世界にきてから釜爺に会っていない。


千「おじいちゃん、まだあそこで働いてるのかな。」

とりあえず、ボイラー室に行ってみることにした。


扉を開けると
布団をかぶって丸くなり
いびきをかいて寝ている釜爺が目に映る。


千「おじいちゃん…ふふっ、変わらないな」


外はどうなっているだろうか。
行ってみたい。


千「あ…靴がない……。」


正面の玄関に置いてきちゃったんだっけ。
いや、でもお客さんもいるし
置きっ放しなんてことはないと思うんだけど…。

千「誰かが持ってっちゃったのかなあ…。」

そうぽつりと呟くと、
下の方からカサカサと音が聞こえてきた。

真っ黒で目玉が２つ。どこか可愛らしい容姿の小さなすすたちが動き出した。

千「わぁ、みんな。久しぶり…！」

すすわたりたちは千尋との再会を喜ぶように
黒いローファーを運んできてくれた。

誰がここに持ってきたのだろう？

千「ありがとう。袴にローファーはあわないかもだけど。」

ふふ、と笑いながら言う千尋に
すすわたりたちはまた引っ込んで
違うものを持ってきた。


千「下駄…？」


すすわたりたちがぴょんぴょん跳ねている。

赤い鼻緒の可愛い下駄。
こんなものどこから持ってきたのか。


千「みんなありがとう！これならばっちりね」


下駄を履いて外に出てみる。
振り替えってすすわたりたちに手を振り
爽やかな空気の朝へと飛び出していく。


千「ここを行くと確か豚小屋で」

千「この先には屋台があって…」


5年前と同じ風景に心を踊らせていると
千尋の頭上に何かが光った。

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