雪が降る夜に【ONE PIECE】 (ページ5)

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cap4 ページ5

＜ｺｰﾄﾞ＞

死の代償は、記憶。

此方の世界でもそれは変わらない。

僕はｴﾙﾀﾞｰﾃｲﾙの世界の記憶を失う。

ｼﾛｴは此方の世界の記憶を失う。

死ななければ良いのだが、それは不可能だ。

僕は仕事上、100%死なないなんて事は絶対にあり得ないし、ｼﾛｴもHPが0になれば死ぬ。

だが、“死”の数がｼﾛｴはとても多い。

僕が2、3回しか死んでいないのに対し、ｼﾛｴはもう、20回は死んでいる筈だ。

下手すると、それ以上かもしれない。

ｼﾛｴは僕の事なんて覚えていないだろう。

でも、僕は覚えている。

初めて、僕が信用した人だから。

僕は、たまに出てくる本の挿し絵を見て、今のｴﾙﾀﾞｰﾃｲﾙの世界の現状を解析している。

ｱｷﾊﾞの街はどうなった??

円卓会議はどうなった??

そんな疑問を解消しているのが、挿し絵だ。

笑顔、泣いている顔、悔しそうな顔。

文章では伝わらないであろう、“感性”。

いつもはそれを見て嬉しくなるのだが、今回は見なければ良かったと後悔した。

書かれていたのは、ｼﾛｴが記憶を失った顔。

こんな顔なんて、見たくなかった。

何かに怯え、悲しんでいるような顔なんて。

僕は、見たくなかった。

本当に、この本は気まぐれだ。

悲しむ顔や怯える顔。

僕はそれを見る度に、悲しくなる。

どうして、僕は此処にいないんだろう。

どうして、僕は見る事しか出来ないんだろう。

そう思うと、悔しくて、悲しくて、何も出来ない自分が、情けなくて、仕方がない。

ｼﾛｴは僕を闇の中から助け出してくれた。

僕の目を見て、綺麗だね、と言ってくれた。

だから、今度は僕が助けてあげたいのに。

どうして。

どうして??

どうして、僕は＿＿＿。

「主!!!」

「っ!!!……ﾙｰｳ」

「だいぶ、思い詰めた表情をしていたぞ」

「あぁ、ごめん。少し、ね…」

ﾙｰｳはそれ以上聞いてこなかった。

きっと、僕が泣いていたからだと思う。

「いつか、話してくれるか??」

「…勿論さ」

「それは良かった」

いつか、が来るのかは分からない。

最初から最後まで話す自信がない。

僕は凄く弱虫なんだと。

改めて、思い知った。