CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ7)

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突然の事に静まり返る研究室内。目の前の同僚が落としたマグカップの、中のコーヒーが零れていることを示す一滴一滴が落ちる音だけが響く室内で、突然の衝撃に誰もがその紫髪の男性に目を奪われた。

その男性は私の目をじっと見つめていて。聞き間違いでなければ先程、私の名前を呼んでいた、ような。
唖然とする私に痺れを切らしたのか、少し眉間に皺を寄せて、静かな室内にブーツのヒールの音を鳴らしながらこちらへ近付いてきた。

え、何。

彼は私の名札をぐい、と引きそれをまじまじと見つめて。深く刻まれていた眉間のシワは段々と薄くなり、なんだ、という顔をして私の名札から手を離して。

深い紫の瞳をこちらに向けて、呟いた。

「なんや、ちゃんと『A』って書いてあるやん。じゃあお前がAで間違い無いな」

確かにハッキリと、私の名前を紡いだ彼の声。え、どうして？と思う暇もなく、ぐるりと回転する視界。突然の事に悲鳴をあげれば、隣で唖然としていた同僚が大声を出した。

「ちょっと、アンタ何者！？Aの事どこに連れていこうとするつもり！？」

ぐい、と引っ張られた足。視界が反転しているこの状況、私、この男の人に担がれてるんだ。それを取り返そうと足を引かれているが...突然、その同僚の声は「がッ！？」という不穏な声と共に止んでしまった。

「いや、ごめんなぁ、こっちもやりたくてやってる訳やないんよね」

どさり。重量のある物が落ちた音、想像に容易いその結末に、喉の奥が詰まるような感覚。
浮いた身体で視線を動かせば、床に横たわっている同僚の姿。ひっ、と声を漏らせば上から「大丈夫、失神しとるだけ」という声が聞こえてきて。

...私にとってこの状況は、全く何も大丈夫じゃないのだが。ようやく異常事態だと認識して、呆気に取られていた男性研究員達が一斉にこちらに向かってくるが、彼は自らの脚や私を担いでいる方とは違う方の手でどんどん研究員達を薙ぎ倒していく。彼の腰あたりにショルダーホルスターに収まった拳銃が見えるが、それを引き抜かないだけ穏便に済ませているつもりなのか。

ただ私もこのまま黙って、肩に担がれながら拉致される訳にはいかないと、抵抗しようとして腕を上げたその時。

部屋の隅の方から女性の悲鳴、複数の人々が倒れていく音。私を担いでいる男性の方に視線を向けても、拳銃を抜いたという様子ではないから。それじゃあ、あの人達をあんな状態にしたのは誰、なんだ？