CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ12)

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拳銃を突きつけられたまま、片手で抱えられた。ぐらりと揺れる地面、咄嗟に私を抱えた赤髪の彼の胴に腕を回した。
どうして彼らはこう、人間離れした力を持っているのだろうか。彼は梯子に足を掛けて、私にも「足、はしごにかけて」と催促した。

眼下、忌々しく煌めくビル群。
ここで落ちたら確実に、死ぬ。

観念して梯子に足をかけ、梯子に掴まると、頭に突き付けられていた固い金属はやがて離れて行き、代わりに柔らかい手が私を抱き寄せた。

こんな状況で無ければ、見目麗しい──通常見目麗しいは女性に言う言葉だが、この男性は背丈の類を抜きにして見ると非常に愛らしい、可憐な女性のようなルックスを持ち合わせていたのである──男性に抱き寄せられ、乙女の手合いであれば頬を可愛らしく染めていたのだろうが。

この状況。何度も言うが、気を抜けば死ぬ。

先に登った誰かが足を上に掛ける度に揺れる縄梯子。度々吹く風、突風。梯子に足を掛けて、縄を掴んではいるものの実質私にとっての命綱は傍に立つこの男性の腕のみ。

隣合わせた死の恐怖を誤魔化すように唇の隙間から息を僅かに零すと、急にぐい、と抱き寄せる手が強くなった。
何事かと身を強ばらせると頭の上、何か人の温もり、当たった感覚？

...この人、今私の頭嗅いだ？

「坂田！Aさん落とすなや！」
「んぁ、うるさいなぁ、落とすわけないやん」

大きな声がした方を見ると、少し上からあの金髪の彼がこちらを見ながら口を開いていた。私と目が合うと、少し頬を緩ませて目を細めた。かと思えば私の隣にいる赤髪の男性に目を向ける際には鋭い視線になり、あれやこれやと指示をしている。

ぼそりと耳元、上のあたりで「なんやアイツめっちゃ表情変わるやん、キモ...」という声が聞こえる。あまり彼ら二人は仲が良くないのか？
そう思考を巡らせていると、重要な部分を聞き逃す。

え、今梯子ごと引き上げるって言った？
ぐらり、揺れる命綱。

確かに揺れるそれ、私と彼。頭上で「何で坂田も持ち上げなあかんねん、お前マジで自分で登ってこいや」という声。いや、私としては今ここで彼に離されてしまっては非常に困るのだけれど。

「俺一人で登ったらこの子風で飛ばされるやろ！」
「...わかっとるわそんなん！あーもう！何で坂田がそっちやねん！」

不機嫌そうな顔をした金髪の彼は、その隣にいた紫髪の彼になだめられつつも再度縄を引き上げた。