CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ21)

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「はい、おまちどうさま」

彼が私の目の前に置いたのは、豆腐と春雨を煮込んだ──隣国の料理のように、スープは辛みを主張しているかのように赤い──料理である。

「一応、あんまり辛くならないようにはしたんですけど。辛かったら卵持ってきますから、言うてくださいね」

私の目の前の席に座ろうと椅子を引いた彼。つい先程まで全く余裕が無く、彼らのことを落ち着いてじっくり観察することが出来ていなかったから、今更なのだけれど。

彼が私を椅子に座らせた時にも感じたが、一つ一つの所作が丁寧かつ優雅なのだ。まるでお金持ちのお坊ちゃま、お嬢様に仕える執事、のような。

じっ、と彼の事を見ていると、私の視線に気付いたのか彼は不思議そうな表情で首を傾げた。...観察していたなどとは言えないので、自分から視線を逸らして下に向ける。

赤いスープに春雨と豆腐。鶏そぼろか豚ひき肉だろうか、お肉と上にはみじん切りにされたネギも散りばめられていて彩りが良い。
腹の虫が鳴く前に一口、スプーンを手に取って口の中へと運ぶ。

「...おいしい」
「ほんまですか！？...あはは、よかった...」

ぱっと顔を輝かせ、表情を綻ばせた彼。ずっと微笑んでいたけど、今は心の底から喜んでいるようだった。うん、ピリ辛と言えどもそこまで辛くないし、むしろ食欲が促進される程度の辛みだ。生卵を落としても、まろやかに味が変わって二度楽しめていいかも。

「...ふふ、やっと落ち着いてくれましたね」

ふんわり、目の前の彼が嬉しそうに呟いた。落ち着いた、というのはどういう事だろうか。別に今まで──いや、警戒や疑問は尽きなかった、かも。
それを解こうとしてくれたのだろうか、この料理で。

「...あの、さっきはありがとうございました」
「え？あぁ...いや、大丈夫ですよ。坂田もうらたんも強引すぎなんです、いくら興味あるからって」

ぷんぷん、そういう擬音が似合う表情に一瞬で変わった彼。ポーカーフェイスかのように思えたが、結構表情豊かなのだろうか。彼が作ってくれた煮物を口にしながら話を聞いていると、先程までの出来事の不満が口からポロポロ出てくること出てくること。

...なのに、段々表情が柔らかくなってきてにへら、と私を見ながら笑うものだから。「まあ、僕の料理美味しそうに食べてくれるAさんが目の前におるからええんですけど」と言うから、少し恥ずかしくなって。