【sm】真夜中、星雲旅行24時Ⅱ【snr】 (ページ44)

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あの後執拗に聞いてくる志麻くんから逃れて、ゆっくり歩きながら着いたのはホールから螺旋階段を上がった先。シャンデリアが間近で見れるし、天窓が先より近い。
建物の構造が少し現実のものとは異なっている気がするが、着いたこの地点、奥の大きな扉の先が目的地らしい。

「開けるで？」
「うん。変なものじゃないんでしょ？」
「そりゃあ、勿論。……お先にどうぞ、お嬢さん」

恭しく頭を下げて、扉を開けてくれた彼。
お礼を言って、部屋に入ると。
大きな、食堂のような長いテーブル。正面にいたのは、黄色の彼。

「ようこそ、ハロウィンパーティへ」

にんまり。笑う彼は、ペンダントを握って。「よう見といてな？」とあの時の志麻くんのようなことを言う。
今回はセンラくんを見るわけじゃないのだろうな、と思って視線をさ迷わせていると。…前から「なんや、俺のことは見てくれへんのか」という声が聞こえた気がするが。

ペンダントを握った彼が、パチン、と指を鳴らすと。
ポン、ポポン、ポポポン！と可愛らしい音を立ててテーブルに並ぶのは、大量のお菓子。
カボチャのケーキ、お化けのムース、コウモリのクッキー、ジャックオーランタンのシュークリーム。どんどん増え続けるそれはテーブルの上を埋め尽くして行き…極めつけは、中央に大きなお菓子の家。

「…ひ、ひぇ」

思わず変な声が出てしまうほど。ハロウィンの為に用意されたお菓子は全て美味しそうで、奇抜な見た目をしているものもあれど食べるのがもったいないほど可愛らしい。

「めっちゃびっくりしとるやん、大丈夫？」
「だい…大丈夫、すごいね、これ」

いつの間にか志麻くんと一緒に隣に来ていた彼は、満足そうに微笑んで。
これ、全部食べられるものでできているのか。どうしようもなく心が浮ついて、どうしよう、どうしようと何故か思ってしまって。

「た、食べていいですか？」
「ふふ、あかんって言うたら？」
「え！？」
「うそうそ、冗談。たっぷり召し上がれ」

いただきます！とセンラくんに言って。わっ、どれから食べよう。迷うな、どれも美味しそうだし。

…迷って手に取ったのは、カボチャのアイシングクッキー。可愛いな、食べてしまうのがもったいない。じっと見つめて、その可愛らしさを堪能してから。半分、かじると。
サクサクとした食感、優しい甘さ。バターの風味が口の中にほのかに広がって。

今まで食べたクッキーの中で一番美味しいかも、これ。