【sm】真夜中、星雲旅行24時Ⅱ【snr】 (ページ35)

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「Aほんまにかわいい。かわいい、かわいい。まーしぃのおかげやで？俺がAは"可哀想じゃなくても可愛い"って知ってたん。ほんまかわええなあ、めっちゃ好き、ほんまに...すき」

饒舌になったセンラは一言でそれを一気に喋ったのだが。

は？好き？
いや、少しの胸騒ぎはしていたけど。花火大会の後、何か違和感があったあの時。少し焦ってつい劇の役決めではAの名前を出してしまったが、それは大成功に終わり。

ただ、その判断がまずかったらしい。Aのことを呼び捨てで呼ぶようになって、その時からなんとなく、薄々気付いてはいたのだけれど。
それに蓋をして、センラが俺に頼ってくれるようになった事、それに対して喜んでいた。

彼と彼女の間に、何か、あった？

「へぇ、ええ度胸しとんなあ」
「うわ。まーしぃ怒っとるぅ、んはは」

それは、七夕の日と同じ光景。
折角遠慮が無くなった兄弟、正々堂々と勝負と行こうじゃないか。そう思うも、雰囲気で酔っ払った彼は正気かどうか判断が付かない。
故に、少し可哀想なハンデを背負っている。同情の余地あり？

「あかんよ？ほんまに。ちょっとでも気ぃ抜いたら俺が持ってってまうからな？」
「何やねん、気ぃ抜いたらって。俺はいつでも本気やけど？」

「...っふ、後で『俺の方が先に好きやったのに』とか言うても知らんからな」

蜂蜜の瞳の中、蠢く敵意。
俺の弟は、こんなに好戦的だっただろうか。

「あはは、ほんまおもろいなあ、なあ？」
「あ？何が」

彼はぼそり、「こいじいざよい」、と呟いて。

「こいじいざよい？」
「そ。砂時計、砂」

くい、と彼がグラスで指した砂時計の、落ちた色。

「恋路十六夜(こいじいざよい)って言うねんて、あの色」
「...やから？」
「お揃いやない？俺ら。おもろいなあ、ほんまに」

恋、恋。頭に浮かぶのは、あの深い紫。

「...初恋薊(はつこいあざみ)」
「そうそう、それ。なんか、色の名前に恋って付いてる季節にAのこと好きになるってなんか、俺らおもろいなあ、って」

面白いはずなど、ないのだが。
へぇ、なるほど。と。

「恋に落ちた、って言ってるってやつ？」とあの時感じたそれを口にすると、黄色の彼も、心底愉快であるという風に目を細めた。