【sm】真夜中、星雲旅行24時Ⅱ【snr】 (ページ28)

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「そんな、私はそんなつもりでは…！」
『その薄汚い手で僕に触れるな。他の、他の男の手を握った手で！…あぁクソ、早く来い、すぐにでもその手───』
「…貴方の婚約者だというのに。そんな酷い扱いをして───姫様、こんな者とは…こんな、もの」

結構酷いことを言うのである、お姫様の婚約者は。
そしてどもってしまうセンラくん。皆がいる前ではさらっと、それこそ何も籠っていないような言葉で言えるのだが。私とだとそれも厳しいらしい。逆に、感情が籠ってしまって。

「…一回休憩にしよっか。多分もう40分ぐらい経つし」
「はあ、うん、そやね。ありがと」

机の上に並べて置いていた、買ってきた飲み物をお互い手に取って近くに座る。思いつめた顔をする彼。ペットボトルの蓋を開けて、飲もうとして。なんだ、結局やめるのか。
蓋を閉めた彼に、ひとこと。独り言のようにつぶやいた。

「……兄弟だかなんだか知らないけどさ。別に好きに振舞ったらいいじゃない。志麻くんも許してくれてるみたいだし」
「─────え？」

「好きな事して、言って、生きたらいいんだよ。今回の主役は、センラくんでしょ？」

隣で、すぐそばで息を呑む音がした。
無責任にもほどがある私の言葉。彼が星に帰った時にそれができるかどうかはわからないけれど、せめて私たちのそばでは。
好きに、自由に生きていて欲しい。

「ん、はは。……はあ、A」

なに？そう言おうとして、彼の方へ振り向く。
あ、と気付いた時には遅く、花火大会の時の記憶がフラッシュバックする。

いつもの、Aちゃんと呼ぶのではなく、A、と呼び捨てで呼ばれて。
団扇で拒んだ唇、儚く散った花火の色。

いつの間にか、唇に柔らかい感覚、私と同じものが触れて。
眼前にあるのは、彼の綺麗な、伏せられた瞳。長い睫毛の美しいこと。

それはスローモーションのように、ひどく長く、永く。
まるで時が止まったような、永遠のようにも思える瞬間だった。