【sm】真夜中、星雲旅行24時Ⅱ【snr】 (ページ25)

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良くないことは続くものである。

そう確信したのは、文化祭の演劇、その練習中。
この世の終わりに近いと確信した私は必死に暗記、もう既に台本の、自分のセリフ部分とその前後ぐらいは覚えていたものの。
センラくんの調子が、良くない。

無理もない。
演劇の台本は、『あるところに、美しいお姫様と、その婚約者の王子がおりました。』から始まる。
その美しい───私は美しいわけではないが、そのお姫様役が私で、婚約者の王子が志麻くんの役。
お姫様は婚約者に日々悩まされている。何故か城の外へ出してくれないし、会う相手も制限されている。いわゆる軟禁状態。

彼女の親の王と王妃はどうしているのかというと、婚約者の王子はお姫様の国よりとても強い国で、逆らったら何をされるかわからないので何も言えないまま。
日々、城の外へ出て自由が欲しいと願うお姫様は、ある日一人の男性と出会うことになる。

それが、隣国の王子で。これがセンラくんの役。
隣国の王子はお姫様に一目惚れし、既に婚約者がいる女性だと知りつつもアピールを続ける。
『貴方のことを、この世の誰よりも強くお慕いしております。どうか、俺の手を取って』
彼女にとって牢獄にも等しい城から逃げ出す算段を立て、用意した彼。彼女は彼らの間で揺れ動きながらも、ついには隣国の王子の手を取って城から逃げ出す決意をする。

その後もひと悶着あるのだが、結果としてお姫様は隣国の王子と結ばれる。
元居た婚約者から奪い取って、だ。

センラくん、ここが引っかかってるんだろうなあ、と休憩時間にペットボトルの水を飲もうとしたのか、蓋を開けたままぼんやりとしている彼を見ながら思う。大丈夫か？

よく考えると春から引っかかっていた部分は所々にあった。
センラくんはあまり自分の意志が無いように感じる。それこそ、我儘を言ったのだって七夕の、あの雰囲気に酔って諸々が露呈してしまった時くらい。
あれが、彼の本心なのだろうか。

これは困ったな、と涼しい風が入ってくる窓辺で一言。
帰ったらロケットさんに相談しようかな、とぼんやり考える。多分彼らのこと、関係性もある程度は知っているはずだ。私に話してくれるかどうかはわからないけど。

窓から見た空模様は。あの良くないことを告げたうろこ雲は、ひつじ雲へと変化していた。