【sm】真夜中、星雲旅行24時Ⅱ【snr】 (ページ16)

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「あ！違う違う！もうちょっと右！」
「っは、センラそのままやと海に突っ込むで！」

今までは見ていただけ、だったけど。この年になって初めてするスイカ割り、意外と楽しいかも、なんて。

イケメンが目隠しをしてバットを持ってくるくると回る時点で笑いがこらえられなかったし。
私が手を叩いて喜ぶもんだからセンラくんすごく恥ずかしそうだったけど、回った後のふらっふらの三半規管がやられている状態では彼は怒るにも怒れず。

スイカ割りだよ！とスイカの方に行くように指示するのに、何故か私たちの方向へ目隠しをしてバットを持ちながらふらふらと歩いて来ようとした彼は少し怖かったけど。

「え！？冷た！？」
「アイツほんまに海の方行っとる、おもろ」
「センラくん！その後ろだから！」

結局彼は何もないところを勢いよく叩いて。海からは上がれたものの、砂を抉っただけだった。笑いすぎて既に体力の限界を迎えている気がするけど、次はAちゃんやからな、と目隠しとバットを渡される。
先程センラくんが最初にいた地点で目隠しをしてバットを持ち、その場でくるくると回る。あれ？意外と目回らないかも。

「行きまーす！」
「おー、海突っ込むなやぁ」

センラくんじゃないんだから大丈夫だよ、と彼らの声が聞こえる方に向いて話す。
彼らがあっちの方にいるから、スイカはこっちだ。そう思って真っすぐ歩き始めると、彼らの大きな声がこちらに聞こえてきて。

「いやA海の方行ってるから！ほんまに海行ってどないすんねん！」
「っく、いやこれめっちゃおもろいやんけ、っは」

あれ、大丈夫だと思っていたんだけどな、とまた方向を変える。センラくんがビニールシートの地面を叩きながら笑う声が聞こえる。そうだよ、さっきの君は今の私みたいに滑稽で面白かったんだよ。
彼らが方向を指示してくれたのだけれど、予想以上に難しくて。また海の方向を向いていたらしい私は、海面を叩いて海水を被って戻って来ることになった。

「はい、志麻くん。センラくんのスイカ叩き割ってきて」
「なんか言い方怖ない？」
「おー、任せろ。センラのスイカ叩き割ってくるわ」

たかがスイカ割り、されどスイカ割り。
スイカ割りに本気になっている自分たちは等身大の子どものよう。
それでも、この夏はもう来ないから。彼らの星でこんなこと、できるのかどうか知らないし。

海辺で志麻くんがバットを大きく振りかぶったのを見て、歓声を上げた。