【sm】真夜中、星雲旅行24時Ⅱ【snr】 (ページ15)

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どうしてだろうか、海で食べる料理は普段より美味しく思えるのは。
海だけでなく、外で食べる料理に大抵のことが言えるだろう。お花見の時に食べたスーパーのおにぎり、あれにも。

奪い取った焼きそばは非常に美味だ。勝利の味がする。
本気ではないのだろうけど、落ち込んでいる志麻くんがとても面白い。焼きそばが無事だっただけで賞賛に値するのだが、走り出そうとして砂に足を取られて転んだ彼は非常に滑稽だった。

「っふ、志麻くん、焼きそば食べなよ。冷めちゃうよ」
「…こんなクソ暑いのに冷めるもクソもないやろ、あーもう」

ビニールシートの上に寝っ転がっていた彼は起き上がって、センラくんに焼きそばを貰って食べ始めた。しかし本当に暑いな。先程クーラーボックスの中から取り出したペットボトルのお茶がもうぬるくなり始めている。

食べ終わった焼きそばのパックと割り箸をゴミ袋に詰めて、風で飛ばされないようにクーラーボックスの蓋で口を挟む。水滴が滴るペットボトルを持って、飲もうとして。
蓋を開けて、しばらく海を見ていた。

口を付けると、既に生温くなってしまった水分が口の中を少しだけ潤す。
風にはためいたパレオを見て、水着のことを思い出して。
『どこのお姫様かと思った』という彼らなりの冗談がふと頭をよぎって。

そうだ、私、『なります、お姫様！』って言って彼らの手を取ったんだ、と思い出す。
今思うとどんな覚悟決めてるんだ、と思うけど。実際こんなトンチンカンな世界を見せられて、これが本当だったからよかったものの。
本当の不審者の人だったらどうしてたんだろう、私。無事でよかった。
…ある意味無事ではないのかもしれないけれど。

でも、本当に私はお姫様になっていい人間なの？

それに答え、応えなどある筈もなく。潮風は、私たちの間を通り抜けた。

志麻くんが焼きそばを食べ終わってから、少しして。
センラくんが「後でスイカ割りしようや」と言ったのにぎょっとする。どこにあるの、スイカ。キョロキョロする私に、彼はそこそこ、とクーラーボックスを指す。
開けると、そこには立派なスイカ。いつのまに！？

「いやあ、出してん。魔法で」
「魔法でって…ちゃんとスイカの味するの、これ」

さあ、と言う彼に私と志麻くんは「えぇ…」とその見た目は普通なスイカを見つめて。
普通の味だといいんだけど、と思いつつ「まだ冷えてへんから置いといてな」というセンラくんの言葉に従って、クーラーボックスの蓋を閉めた。