【sm】真夜中、星雲旅行24時【snr】 (ページ47)

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「すっごい綺麗だった！」と満面の笑みで言う彼女は、この星空に負けないくらいとても綺麗で。

少し歩いてきて気持ちが収まったのか、普段と同じ表情をしていた。

─────俺では笑顔にさせることが出来ないという事実に、強く唇を噛んだ。

「そろそろ戻る？次の星へも急ぐやろ」
「そうだね、ちょっと勿体ないけど」

名残惜しそうに星空を見上げる彼女は。

「...あぁ、綺麗、やな」
「うん、綺麗だね」

彼女の指す綺麗と、俺の言う綺麗は違うけど。

ロケットのステルス機能だけを解いて、いつも通りそれに乗り込んで。
まだ一人だけ、この船に乗り込んでいない彼女は。

星空に一人、取り残されたように見えて。
「A」と名前を呼べばすぐ振り向いた彼女は。
二人とも、ありがとう。と小さく呟いて。

どうして、こんなにも愛おしく見えるのだろう。

自然に取ってくれるようになった手。
その温もりに、生きている事を実感して。

...初めてかもしれない、俺の事をしっかり見て叱ってくれた人だから？
自分より弱いはずの彼女が、命を懸けて俺を守ろうとしてくれたから？
しっかりと抱き寄せるように、守ろうとしてくれたその手が、その温もりが。
久しく、忘れていたものだったから？

好きになった理由など、とうに忘れてしまった。

溢れるのは、彼女の事が"今"好きな理由だけで。

─────どうか、どうか。
彼女が星空に溶けてしまわないようにと。

彼女の手を握って、強く引いた。

次の目的地はAdhara(アダーラ)。

操縦席近くの砂時計は、深く沈んだ梅雨を振り払うように鈍い緑色の砂を落とした。