【sm】真夜中、星雲旅行24時【snr】 (ページ37)

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洗面所のドアを開けたときは企んだ表情で「バスタオル、欲しい？」って感じだったのに、今目の前にいる彼は息切れ、痛みに耐える表情、少し強めの声で「バスタオル、欲しい？」って言っているのが面白くて。

「……バスタオル欲しい？」
「あ、はい。バスタオルください」

フフン、と笑みが零れてしまって。というか、何かを企んでいた志麻くんはもう足の痛みでそれどころじゃなくなっているらしい。
笑いをこらえきれない私を見て、若干志麻くんも笑いそうになっているようで。というか、話しながら笑いがこぼれてしまっている。
タオルしか身にまとっていない私とバスタオルを盗んだ張本人が笑い合っているのは不思議な光景だけど。

「いや、あのな。俺もっと余裕ある～みたいな。Aの照れて真っ赤な顔見る気満々で来たんやけど」
「わかったから、バスタオル」
「…ひどない？」
「志麻くんの方がひどいでしょ。バスタオル」

ん、と胸元を片手で抑えながら、バスタオルを寄越せのポーズ。
も～、センラもノリノリやったんに、とかいうとんでもない言葉が聞こえてきたけど。こいつらやっぱり共犯だった。

「バスタオル返すのはええねんけどさあ、お願い聞いて」
「何？変な事じゃなかったらいいよ」
「…明日。俺もセンラも部活の休み被ったからさ、出かけへん？」

「……なんだ。別にそんなの普通に言えばいいのに。いいよ、どこでも行くよ」
「どこでも？」
「どこでもは行かないかな、常識的なところで」

危うい。変なところで言質を取ろうとするな。
上機嫌そうにバスタオルを私に渡してきた彼は、じゃ、明日楽しみにしてるからと扉から足を抜いて、ふらっとリビングの方へと戻っていった。

さて。確かに男女で共同生活を送るうえで、こういうハプニングはつきものなのかもしれない。意図的ラッキースケベは起こるものなのかもしれない。いや、意図的なのはやめて欲しいが。
バスタオルを手に入れた。ただし布一枚。一番必要な自分の服は無い。

まあ志麻くんだけ動いてたってことは、センラくんは賛同するだけ賛同して夕飯の準備をしているはずだ。
じゃ、大丈夫なはず。

…いつも通り、この考えが甘かったのである。