【sm】真夜中、星雲旅行24時【snr】 (ページ34)

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彼女と下駄箱前で出会ったのは偶然だった。
俺が声をかけると、スマートフォンで何か操作をしていた彼女が顔を上げて。
瞬間、パッと輝く。

あぁこれ、まーしぃに言うたら羨ましがるんやろうなあ、なんて。

…いつでも彼のことをどこかで考えている自分に、少し嫌気が差しながら。
パタパタと走ってきた彼女は、"傘が無い"ということを伝えてきて。
あ、玄関に用意してた折り畳み傘カバンに入れるの忘れたな？と昨日の彼女の姿が脳裏によぎる。
思わずアホやん！と笑いながら言って、少しムッとしている彼女が面白くて。
傘を二本持っていないかと聞かれて。

「あー、折り畳みの方はAちゃんみたいに傘忘れた奴おったから貸してもうたんよなあ。てか帰るとこ一緒やし同じ傘入ってけばええやん」

嘘をついた。

しっかりカバンの中に折り畳み傘は一本ある。
しかも魔法を使えば傘の一本を創り出すくらい朝飯前だ。

…ちょっと覗いたらまーしぃはまだ部活続きそうやったし、大丈夫やろ、そう思って。
意外とすんなり相合傘を了承してくれた彼女に、これはチャンスと悟って。

でも。
結局するのは、彼の話ばっかり。
自分が嫌になる。

彼が想いを寄せる彼女に。彼女を奪ってやったらアイツはどんな顔をするのだろうか。
いつでも越えたいと、出し抜いてやると思っていたその壁に挑戦する前に、いつも自分から怖気づいてそれを避けてしまう。

彼を立てたいのか、自分が優位に立ちたいのか。
時折、自分でもやりたいことがわからなくなる。

「センラくんはこっちに来てから食べたもので、一番美味しいって思ったものなんだった？」

彼女は俺に話しかけてくれているのに。
どこか、俺の方は壁を作って話しているような気がして。

「あー、まーしぃはアレが美味かったって言うてたんやけどなあ、俺はな～」

ほら。また。
どうしようもない自己嫌悪の中、傘を揺らした。